2013.08.05 Monday
〜7.日向と日陰〜
沈んだばかりの太陽が、一番星が見え始める西の空を青白く輝かせていた。
整理整頓された中で、唯一ベッドの上だけが乱れている彼の部屋には、まだ微かに彼女の甘い残り香が漂い、殺風景な風景に柔らかな雰囲気を醸し出していた。
シャワーを終えた岬はそのベッドの上に腰掛けると、瞳を抱いていた間に着信のあった数件の音声とメール履歴を確認していた。
そのどれもが女性からであり、今夜の予定を聞く者、明日以降の予定を聞く者等、全て岬に好意を寄せる者である事がはっきりと分かる内容ばかり。
男からは1件もないのかよ。バイト先からも無しか・・・
まあ全然問題ないけど・・・
あれ?麻衣から3件も電話?めずらしいな、留守電もメールも無しなんて・・・
何かあったのかな?
まあいいや、その内向こうからかけ直してくるだろ
岬はいつもの癖で携帯を掌でクルクルと回しながら、ついさっきまで一緒だった瞳の事を思った。
結局、何があったのかはっきり聞けなかったな・・・
瞳ちゃんの後にシャワー浴びて出てきたらもう居なかったし
彼氏の浮気疑ってたみたいだから、実際そうだったのかな
一応、後10日あるから、それまでに完全に俺のものにしないと
・・・まあ、充分か・・・そんだけあれば
でも射精1回だけって、久し振りだ
瞳ちゃんの事思い出すだけで、また勃起してくるわ・・・
岬は1通のメールを送信すべく、画面を開く。
「これからリカコさんの部屋で晩飯食わしてよ」
その一行を送信してから着替え、外へ出る。
玄関の鍵を閉めている間にリメール着信。
「本当に?今ちょっとだけ残業してるから、後1時間位待ってもらえる?」
絵文字満載の画面を一瞥し、溜息をついた。
秘書の仕事なんてそんなに忙しいもんなのかね・・・残業とかって、ちょっとウザい・・・
「じゃあいいわ。また頼むわ」
投げやりに送信ボタンを押して、踵を返し繁華街へ向かおうとする岬に、間髪いれず音声着信が届いた。麻衣からだった。
「岬先輩?やっと繋がった・・・今少しいいですか?」
「ああ、今日はゴメンな。どうしたの?」
麻衣は、以前から高梨に浮気を疑われていて、今日その事がバレた事、そして、岬と完全に別れる決意をした事を伝えた。
「そうか。ちゃんと高梨君の彼女になるって事だな?」
「はい・・・」
「俺がこう言っちゃあアレだけど、俺なんかよりもずっと麻衣にお似合いだよ、彼の方が」
「・・・・・」
「大事にしてもらうんだぞ」
「はい・・・」
電話口で涙声になるのが分かった。
「俺とはこれからもいい友達でいてくれよな?大学ですれ違っても無視しないでくれよ?」
「そんな事しませんよ」
泣き笑いで答える麻衣。岬は最後に軽く冗談を言ってから電話を切った。
こんな時はお互い笑いながら終わらせないとね
またいつ世話になるかも分からんし・・・
怪しげな笑みを浮かべる岬の携帯にメールが着信した。
ったく、今度は誰だよ・・・
「ごめんね、仕事もう切り上げるから。すぐ帰るから部屋で待ってるね」
最初からそうしろよ・・・面倒な女だな
やれやれといった表情、しかしどこか楽しそうに再び逆方向へ向かう岬。
リカコも大切な女なんだけど、明日も瞳ちゃん来てくれるだろうから・・・
瞳は台所で母と夕食の準備をしていた。
高校を卒業してからは夕食の準備は瞳がする事が多く、母は簡単な付け合せくらいで、他は全て瞳が調理していた。
だから和希の部屋で夕食を作る時は、家の準備と合わせて2回作ることになっていたが、彼女にとって和希の部屋での特別な「儀式」については家事という感覚は無かった為、全く苦痛ではなかった。
「瞳に私からも言っておくけどさ」
テーブルを拭きながら母が話しかけてきた。
「和希君、試験勉強に本腰いれるから。瞳も協力してあげてよ」
「勿論だよ。なんでそんな事わざわざ?」
「これからはあまり和希君の部屋には行くなって事。特に夜は」
瞳は絶句した。
和希との逢瀬を母は知っていたのだろうか?
少しドキドキしてきた。
知っていたとしても、そんな恥ずかしい事を実の母に対して認めるわけにも行かず、瞳はどっちつかずの生返事をしていた。
「傍で支えるのも良いけど、和希君、本気で受かりにいかないと、どんどん難しくなるんだから。だから貴女は少し離れたところから見守るようにしなさい。それだって愛情だよ」
「離れたところって?」
瞳は泣きそうになった。和希と離れる、という言葉に敏感に反応してしまったのだ。
「何情けない顔してんのよ。隣同士なんだからいいじゃない。別にどっかに引っ越せなんて言ってないよ。二人で相談してルールを決めればいいんだから」
結局、その後やってきた和希と三人で食卓を囲み、三人でルールを決めた。
朝と夜は、瞳の家で食事を取ること。昼は外食。
瞳は毎朝和希を起こしに行っても良いが、それ以外は基本的に和希の部屋には行かないこと。
この二つだけ。
和希の為とは言え、どんよりとした気分でいると最後に和希が母に提案した。
「瞳が僕の部屋に来るのはダメでも、僕がこの家に来るのは自由ですよね?息抜きの時とか」
「それは良いんじゃない」
口元に笑みを浮かべながら答える母。
瞳は思わずガッツポーズをしながら、母に気付かれないようにウインクする和希と視線を合わせた。
「じゃあ、俺戻るわ」
「うん・・・勉強、頑張ってね」
「おう。あっ瞳、あのさ」
「ん?どうしたの?もう息抜きする?いいよ、こっちおいで」
「ははは、そうじゃなくて」
ソファに座って両膝をパンパン叩いて呼び込もうとする瞳に笑いかける和希。
「来月昇段審査があるんよ。俺、出るからさ。応援に来てくれよ」
「空手の?分かった、絶対行く」
「ほんじゃま、よろしく〜」
和希は母から死角になっているのを良い事に、瞳にそっと近づいてキスをした。
思わず顔が綻んでしまう瞳。
和希は優しく微笑みかけると何も言わずに出て行った。
嬉しい・・・
なんか、ドキドキしちゃった
やっぱ、私先生の事大好きだ。先生の一挙手一投足を目で追ってしまう
先生のそういった振る舞いのどれもが抱き締めたくなる程愛着があって、可愛いんだ
ああ、先生・・・こんなに、大好き・・・・・なのに・・・
ふとした瞬間に、またあの事が頭を過ぎってしまう
私達、普通に喋ってたけど、本当はお互い隠し事をしている
先生・・・先生は、私に麻衣との事、言う気ないの?
いや、私こそ今更何か言える立場じゃない・・・
でも、今目の前に先生がいるという事実だけで私は満足しているのもしれない
見て見ぬふりをしたいのは私の方?
・・・どうしたらいいんだろう
このままお互い知らないふりしていくの?
そんなのって、なんかおかしい
嫌だよ、絶対・・・
夜遅く、瞳がその日二回目のシャワーを浴びている時の事。
浴室内の大きな鏡の前で、胸に痣のようなものを彼女は見つけた。それは小さく、赤く、瘢痕のようにも見えたが、それが瞳にとって人生初の「キスマーク」と言われるものである事に気付くのに時間はかからなかった。
こんなところに・・・ここにも・・・あ、あんな所にも
背中や腰にもある
先生にもつけてもらった事なんかないのに
全身の「足跡」を見て、彼女は一瞬膝の力が抜けそうになる。
改めて現実の姿を見せられて、瞳は死にたくなるほどの罪悪感に飲み込まれそうになった。
しかし、彼女は決めていた。自分が取った行動に後悔はしないと。それが正しいかどうかの判断は、今後はっきりしてくる。だからそれまでは何も考えないようにしようと。
・・・そう、彼女は自分自身を無理矢理正当化する事で、ガラス細工のような彼女の心のバランスを辛うじて保っていたのだった。
シャワーを止め、瞳は自分の手首に吸い付いてみた。特に赤くなる気配はない。
もう一度、今度はかなり力を込めて吸ってみた。すると流石に少し赤くなり、次第にそれがどんどん色濃くなっていく。
鎖骨の下、乳房の間、乳首の横、お臍の回り、下腹部、太腿、背中、腰・・・
見れば見るほど、ありとあらゆるところに岬に抱かれた証拠が刻まれていた。
その一つ一つを静かに指で撫でる瞳。
私、岬さんにこんなに強く吸われていたんだ。全然気が付かなかった
何度も何度もキスしたのは覚えている。あと、指であそこを触られたり、あの人のあれに触れたことも覚えている
でも・・・一つになっている時の事は、あまり覚えていない
なんだろう、ずっと気持ちがふわふわしていたというか、記憶が曖昧になるほど、良かった・・・のかもしれない
背徳感?なのかな・・・
全てが終わった後の、あの尋常じゃない気怠さは今もはっきり覚えているけど
やだ・・・私、また濡れてきている・・・
私って人は・・・・・
自分に呆れ、失望しながらも、無意識に股間に手を伸ばしていた瞳は、その部分にまだ微かに残る痛みとは違う違和感を感じながら、潤んだヴァギナの表面を人差し指で円を描くように撫でていた。
私、岬さんに抱かれたんだよね・・・
再び後悔の念が脳裏をかすめる。
彼女は首を横に振ってその思いをかき消すと、シャワーの温度を一気に下げて頭から水を浴びた。
しかし、悶々とした身体の疼きは、冷たいシャワー程度では沈める事はできなかった。
ベッドに入ってからも瞳は右手をその部分から離す事が出来ないでいた。
彼にキスされた事、頭を優しく撫でられた事、強く抱き締められた事、指と口で中を掻き回された事を思い浮かべながら、彼女は右手の動きを加速させていった。
私、凄くいやらしい事ばっかり考えてる
先生は多分今も勉強しているっていうのに・・・
でも、止められない・・・身体が熱い・・・だから、沈めるだけ・・・
罪悪感の中で自分自身を納得させ、そしてそんな思いを頭の中から消し去る為に快楽の底に自らを落とし込もうと必死に指を動かし続ける瞳。
しかし彼女が岬のペニスの形を思い出した途端、一気に高まってしまい、その異常なまでの高揚感の盛り上がりに思わず右手を離してしまった。
瞳は慌てて携帯のアルバムを開けると、何十枚もある和希と撮ったプリクラの一枚を探した。
それは、引っ込み思案な二人にしては大胆にも肩を抱き寄せながら撮った一枚。
その一枚を手に再びベッドに飛び込んだ。
先生、大好き・・・大好き・・・大好き・・・
瞳はその一枚を見つめながら果てた。目に涙を浮かべながら。
イクその瞬間は岬ではなく、和希と一緒に・・・・・
彼女の最後の抵抗だった。
同じ頃、岬は自宅への暗い道を一人歩いていた。
彼が1年の時の4年の先輩であるリカコの部屋で夕食を取ったその帰りである。
入社2年目にして大手商社の秘書を務める彼女は、その信頼溢れる仕事ぶりもさることながら、ずば抜けた美貌と社交性も持ち合わせていた。
日本を代表する企業の第一線で働く、そんな彼女の周りは、目も眩む程に華やかで賑やかだ。恐らく日本中のOLが羨むような境遇に自分が置かれている事は、彼女自身もよく理解していた。
当然、社内外から縁談を持ちかけられる事も多く、しかもそのどれもが良縁という言葉では足りない程レベルの高い相手ばかりだった。
そんな彼女を好き放題に出来る唯一の男の岬。
日中、社内で威風凛凛とした佇まいのリカコも、岬の前では従順な女になる。それは決して彼女のM体質が根底にあるから、という理由だけではなく、岬という一人の男に対する想いが強すぎるが為である。
この日、夕食を食べながらリカコに相談を受けた。某マスコミのオーナー社長の御曹司との縁談について。
岬はいつも通り「やめろ」と即答し、リカコも「分かった」で終わる。女性にとっては大事である縁談話も、二人の間ではほんの数分で終わる話だった。
岬がリカコの縁談を断る理由、それは彼女が今までで唯一現実的に結婚相手として考える事が出来得る相手だったから。
大手商社で秘書をする彼女のコネクションは、将来家業を継ぐ可能性のある岬にとっては非常に魅力的だった。勿論、その為だけに結婚を意識するほど、岬は家業に執着は無かったし、打算的な人間でも無かった。一人の女性としてみても、彼女の容姿は言うに及ばず、家事能力や人柄全てに渡り、他では代え難い人物だと彼は考えていたからだ。
しかし、リカコと必ず結婚する、という意思もなかった。彼にとっては「もし結婚するならば」程度でしかなかったのである。それでもリカコが誰かに取られる、と思うと、そこはやはり「取り敢えず」否定したかったのだ。
リカコと会ったのは一ヶ月ぶりだけど、やっぱ料理は最高だな
あいつの将来の旦那、マジで幸せ者だよ
夜の方も仕込んだ事はバッチリやってくれるし
てか、それ以上か
今日はアナルに出した後、言ってもいないのにお掃除フェラしてくれたしな・・・明日、瞳ちゃん来る予定じゃなければ、前の方でもやってやれば良かったんだけど
彼はニタニタと笑いながら夜道を一人歩いていた。
翌朝、午後まで講義の無い瞳は、和希と母を送り出した後、一人自宅に残って部屋でメイクをしていた。
普段はファンデーションを軽く叩き、眉とアイラインを整えて薄く紅を引くだけ。急いでいる時などは五分程度しかかからない彼女のメイク。
しかし、この日は既に15分も経過していた。
鏡の中の自分を見てハッとした。
今時の若い女の子と比較してもまだまだ薄いと言わざるを得ない程の化粧でも、彼女にとっては充分濃かった。
知らず知らずの内に濃い目のメイクをしていた事に気が付き、慌てて顔を洗いに行く。
私、何やってんだろう
時間があるからって、ちょっと気合い入り過ぎ?・・・
・・・何の為?
・・・誰の・・・為?
それ以上の事は考えないようにした。浮ついた自分の気持ちを戒めながら、踝まである長いスカート、胸に余裕のあるデザインのサマーニットを纏って彼女は外へ出た。グレー超の地味な服装、やや伏せ目がちに駅まで歩く彼女の姿は、どこか人目を避けるような雰囲気。
実際、午後の講義が終わるまで、学内でも殆ど声を掛けられる事はなかった。
だけど、何故麻衣は私に何も言ってこないんだろう
私にバレてないとでも思ってるのかな
だとしても、私達、親友なのに・・・言いづらいのは分かるけど、ちょっと酷いよね・・・麻衣
やりきれない思いで携帯をチェックする。やっぱり麻衣からはなんの連絡も入っていない。
これから岬さんの部屋か・・・
緊張、する必要はないんだけど、やっぱ正直昨日の事があるから・・・なんか行きずらい
駅を降りて岬のアパートへ向かう途中、後ろから誰かに声を掛けられた。
「瞳ちゃん、ナイスタイミング」
振り返るとそこには岬がいた。いつか見た時のように、片手にはコンビニの袋。
「またアイス買っちゃった。一緒に食べようよ」
屈託無く笑う岬の顔を見て、少しだけ気が楽になる。
「太ったら岬さんのせいですよ」
自然と出た言葉に瞳自身が驚いていた。和希以外の男と並んで歩いているという状況もそのまま受け入れている。
一度、正確には二度、肌を合わせた相手には、ここまでガードが緩くなるものなのか。初めての経験に戸惑う瞳に、柔らかに話しかける岬。
「凄く明るい表情してるね、なんか俺、嬉しいわ」
え?・・・私、明るい表情してるんだ・・・・・
岬の言葉に思考が止まる。さっきまで麻衣の事を考えていた。和希の事も考えていた。岬と会う事に戸惑ってもいた。
でも、それなのに彼にそんな事を言われてしまい、瞳の胸の奥がざわめき出す。
岬の部屋の中に一歩入ると、そのざわめきはより一層大きくなって行き、靴を脱いで部屋に上がろうとした時に一瞬躊躇してしまった。
昨日の事がリアルに思い出され、それが抑止力となって彼女の行動を制限しようとしたのだ。
しかし、岬に後ろから押される形でなし崩し的に部屋に上がってしまい、それからはいつものように岬のペース。彼の会話力に次第に心のガードは緩くなり、思わず本気で笑い出す始末。
そんな中で不意打ちで岬に言われた言葉。
「もう吹っ切れたの?」
瞳を見つめる彼の真剣な眼差し。笑顔など微塵もない、寧ろ険しさすら感じられる強い眼差し。
瞳は黙ってしまった。
岬は一メートルの距離を保ったまま続けた。
「彼氏の事でしょ?ここ数日色々あったのは・・・・俺、瞳ちゃんが嫌な事は忘れさせる自信はあるけど、ちゃんとケジメついたの?」
瞳は首を横に振らざるを得なかった。
それを見て大きな溜息をつく岬。
「そうなんだ・・・麻衣ちゃんはしっかりケジメつけたのにね・・・」
「麻衣」の固有名詞が出た瞬間、瞳は大きな目で岬を見てしまった。
麻衣?今麻衣って言ったの?岬さん
なんであの事を知ってるの?麻衣、岬さんには言ったの?どういう事?
思わず口に出そうになったところをぐっと堪える瞳。
そんな彼女の表情を一瞬で悟り、岬は慎重に言葉を選んで言った。
「麻衣ちゃん、高梨君って男の子と仲良しなんでしょ?これからはちゃんとしてくって、言ってたよ。それ以上はあまり詳しく聞いてないけど」
岬はそう言って瞳の顔色を伺った。
男と違って、女は友人の恋愛話には深く立ち入らない場合も多い。
寧ろ女で親友なんてあり得ないとさえ思っていた岬は、自分が言った事に対する瞳の微妙なリアクションで、麻衣との間で何かがあった事を容易に想像した。
動揺で肩を落とす瞳の隣に座り直し、優しく頭を撫でながら言った。
「俺はいつでも瞳ちゃんの味方だから。どんな事があったって、絶対に裏切らないよ」
昨日と同じ、二人の距離は0メートルになった。
分厚い六法全書、学生の時から使っている参考文献の数々に囲まれて、和希は何百万、何千万という文字を頭に詰め込んでいた。
手垢がつく程に使い込まれた年季の入った参考書に、幾重にも引かれたライン。
彼の方針で、相性の良い参考書は何度も何度も読み直し、何処に何が書いてあるのか一瞬で判別出来るまで読み込む事にしていた。
ただ、法律は日進月歩、古い文献に拘っていると試験には対応出来ない。
そろそろ改訂版出てる頃だから、新しいの揃えるかな
そうだ、瞳と買いに行こうか・・・
いいよな?こういう前向きな理由なら
大きく伸びをしながら瞳の顔を思い浮かべる。
以前のように自由に会えなくなる事を考えるだけで胸が締め付けられる。
だが、それをバネにする事が出来るのが、和希の和希たる所以。試験に合格した後の法律家としての人生を、瞳と一緒に歩んで行くという夢がある和希にとって、一時的に彼女と会えなくなる事は何ら障害にはならなかった。
目尻を軽くマッサージしながら窓の外を見る。
すると、葉月と彼氏と思われる男の子が仲良く家に入って行くところが見えた。
今日は部活ないのかな・・・
今の時間って、家には誰もいないはずだけど・・・これって、やっぱ、あれかな・・・
いやいや、俺は何を考えてるんだ。瞳の妹だぞ?
ムラムラと湧き上がる淫靡な妄想。図らずも、彼の股間は勃起し始めていた。
俺は獣か?彼女の妹とその彼氏で妄想して興奮してるなんて
・・・ちょっと溜まってんのかな・・・
弱々しく股間を握り締め、罪悪感に塗れながら右手を上下させる。
彼の頭の中は葉月ではなく、瞳で満たされていた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ!ああっ!あああっ!」
アパートの部屋に響き渡る嬌声。普段はどちらかと言うと大人しく、感情に任せて喜怒哀楽を爆発させる事のない彼女からは想像が出来ない程、この時の声は大きく、悩ましく、どこまでも甘かった。
そのギャップに頭が痺れる程興奮した男のペニスは、より一層硬さを増し、彼女の膣の奥をグリグリとえぐる。
「あっ!そ、それ・・・はぁっ!あっ!凄っ!・・・あんっ!あんっ!あんっ!あっ!」
バックで挿入され、後ろから細い腰をがっしりと掴まれながらペニスを打ち込まれ続ける。
汗に濡れた彼の腰が彼女のつきたてのお餅の様な尻を叩き、離れる時は名残惜しそうにくっ付いてくる様を眺めながら、興奮の極致にいる彼は射精へ向けて動きを早めていった。
挿入されたまま、何度もアクメを迎えていた彼女の身体は軟体動物の様にふにゃふにゃで、股関節は最大限に開ききり、顔を枕に押し付けた状態で必死にシーツを握り締めていた。
岬は上半身を瞳の背中に密着させると、右手を回して彼女の丸いお腹を撫で回し、指を臍に深く差し入れ、掻き回した。
「あっ!あっ!あんっ!あんっ!あんっ!あんっ!あんっ!あんっ!」
「瞳ちゃん、俺、もう・・・」
「わ、私・・・も、あぁぁぁぁっ!イクッ!い、イクッ!」
同時に果てた二人。
全身を痙攣させる彼女の背中に体重をかける。
お互いの汗が混じり合い、お互いの鼓動を感じながら、二人は少しづつ呼吸を整えていった。
結局、こうなるんだ・・・
私、こんなに意思が弱い人間なんだ
ここに来たのは彼との約束だから?
約束・・・そうだよね、それはそうだと思う
でもそれだけ?
ううん、私、ここにくる時に本当は少し期待していた、こうなる事を・・・
一筋頬を伝う涙を拭いながら、彼女は下唇を噛んだ。
なんなのよ、この涙は
偽善?
岬さんに抱かれながら、先生の事を思ってるから?
私って・・・・・・
「ふっきれるまで、何も心配しないで俺を信用して欲しい」
そんな言葉だけを信じて、私はまた岬さんに抱かれた
ベッドで横を向いて寝そべる私を、彼は後ろから抱き締めてくれている
泣いてる私の頭を撫でながら、何も言わずに抱き締めてくれている
何だろう・・・ホッとする・・・
彼の体温が、鼓動が伝わる度に、私の心の奥にあるはずの、誰にも触れられたくない決心までも、全てが溶かされてしまいそう
瞳が落ち着いた頃、岬は瞳の頭を撫でていた左手で彼女のうなじを隠す長い髪をかき分け、露わになったそこに軽くキスをした。
うなじから耳たぶ、そして肩に唇を這わせ、昨日付けたキスマークに重ねる様にまたキスをする。
右手で乳房をゆっくり揉み、乳首を摘まむ。そして、彼女の右手に指を絡めると、彼女も軽く握り返してくれた。
彼はそのまま彼女の手を自分のペニスに持っていく。
彼女の手がそこに一瞬触れた時、彼女は目を丸くしてこちらを向いた。
どうして?さっき、したばかりなのに・・・・・
彼女の心の声が聞こえたかのように、岬が答えた。
「瞳ちゃんが魅力的だから。俺は何度だって君を抱きたい。このままずっと、ずっと抱いていたい」
和希とのセックスはいつも一度きり。そんな彼としか経験のなかった彼女にとって、それはあまりにも衝撃的な現実。岬に対し、改めて雄としての猛々しさを感じずにはいられなくなる程の衝撃。大きな身体に包まれて、大きなペニスで支配される。それはある意味男性に対する尊敬の念であったり、頼り甲斐という恐らく女が男に対して一番求めるものなのかもしれない。
自分の経験と想像を遥かに超えるレベルでそれが岬に備わっていることを、彼女は認めざるを得なかった。
この人の前では、中途半端な理性はなんの意味も持たない。
屈服するしかない・・・
諦めとも開き直りとも違う、寧ろ女として進んでそうしたいとさえ思える程、彼女は生まれて始めての感情と欲求で爆発しそうになっていた。
瞳は右手で彼の硬いペニスを握りながら気怠い身体を彼に向け、朦朧とした意識の中で自分でも信じられない言葉を口にした。
「フェラチオ、したい・・・」
岬は瞳の長い髪を撫でながら、何も言わずにゆっくりと仰向けになった。
白い壁のいたる所に貼ってあるスナップ写真、それはクラス全員で撮ったもの、仲の良い友達とのもの、そして彼氏とのツーショット写真もその中に紛れていた。
整理された机の周りには教科書と参考書、棚の上には水泳で入賞した時の楯や賞状が飾られ、その隣に可愛い熊の親子の縫いぐるみが座っている。
白とピンクを基調としたその部屋は、一見で少女が主と分かる可憐さに溢れていたが、乱れたベッドに横たわる二人の姿は、そんなメルヘンチックな雰囲気とはおよそ似つかわしくない状態にあった。
ベッドの上で手を繋ぎなから天井を見上げる二人。よく見ると、二人とも制服姿ではあるが、下半身には一切何も纏っていなかった。
いつ誰が帰ってくるか分からないから、という彼女の理由により、必要最低限の準備だけで二人は交わっていたのだ。
「あの、もう一回・・・」
「だ〜め」
彼が言い終わらない内に駄目出しをする彼女。
時間がない高校生の二人の逢瀬はいつも慌ただしかった。
彼女の部屋に入った瞬間にスイッチオン。
座る間ももどかしく、二人は抱き合い、唇を貪り、お互いの下半身を裸にする。
無骨ながらも、相手を思いやる気持ちに溢れた愛撫を彼女に施し、彼女は触れたら爆発しそうな彼のペニスを口に含む。
彼の鞄から取り出した避妊具を着けるや否や、無心になって腰をぶつけ合い、果てる。
それを僅か30分の間に二回こなす。
彼はいつも三回目をおねだりし、彼女に一刀両断される。
あれだけ大量で濃い精液を二回出しても、彼の股間は真上を向いたまま。
彼女は短いスカートを履くと、起立したままのペニスをパンツに押し込むのに難儀している彼を一瞥、軽く溜息をついた。
まだ硬いままなんだ・・・
いつもの事とはいえ、凄いな・・・
まあ、その、なんだ、今日は結構気持ちよくしてくれたから、たまにはいっか・・・
彼女はベッドに腰掛けると、黙ってベッドの上を叩き、ここに座れと彼氏に示唆した。
彼は不思議そうな面持ちで促されるままベッドの真ん中に座ると、いきなり彼女の両手で顔を挟み込まれ、濃厚なディープキスをされた。
ズボンのファスナーを上げようとしていた彼の両手は止まり、全身金縛りにあったように動かない。
目を閉じて自分の舌を貪る美少女の顔をどアップで見て、彼の股間は益々はちきれそうになっていった。
彼女は何も言わずに顔を彼の股間に埋め、ファスナーの間から勃起したペニスを辛うじて取り出すと「今日だけだよ」と呟いて、口に含んだ。
暖かな感触が彼の股間を支配する。
竿から亀頭へ舐め上げ、舌をカリ首に纏わり付かせ、尿道に舌をこじ入れたかと思うと、ズッポリと咥え込んで上下させる。
とても高校生とは思えない性技に、あっという間に三度目の射精感に見舞われる。
彼女のスライド運動の振動で、四つん這いになった彼女の短いスカートが少しづつ捲り上がり、真っ白い尻が彼の目に飛び込んだ瞬間、三度目の射精を愛らしい彼女の唇の中で果たした。
彼の精液を必死に嚥下しながら、より一層力を込めて吸引してくる彼女の頭を両手で抱きしめて、いつ終わるとも分からない究極の射精感に彼は酔いしれていた。
ほぼ時を同じくして葉月の姉も、もう何度目か分からないアクメに向かって、全身全霊を一人の男に委ねていた。
ベッドの上で正常位で繋がる二人は、強く抱き合い、彼女の大きな乳房が押し潰され横から溢れ出すほど完全に上半身を密着させていた。
浅黒く日焼けした筋肉質な男の背中は汗で滲み、彼は三度目の射精をこの体位で成し遂げようと決めていた。お互いの性器を時間をかけて舐め合い、一通りの体位をこなした後に行き着いた王道の体位。
騎乗位で豪快に揺れ動く彼女の乳房を見上げながらのフィニッシュもいつかは叶えたいが、水泳で鍛えた筋肉とは違うのか、太ももの付け根にだるさを訴えた彼女を気遣って、それは次回以降のお楽しみという事にした。
それにしても、ただキツイだけの昨日とは違って、だいぶ熟れてきたんだろうな。例えるなら「力こぶ」が沢山膣の中にある感じは、初めてだ
ピストンする度に力こぶの一つ一つの凸凹が亀頭やカリ首を強烈に刺激してくるから、俺としたことがこんな短時間で二回も射精に導かれてしまった
相変わらず子宮口は硬く閉じたままだけど、ここを突破したらどうなっちゃうんだろうな・・・
俺も瞳ちゃんも失神?・・・なわけないか
彼女の上で、ゆっくりと膣の中の感触を味わうように腰を繰り出す彼。
岬の身体に腕を回し、硬い男の筋肉の感触を掌で感じながら、汗で濡れた背中を撫でる瞳。さっきから何度も自分を絶頂の淵に追いやってくれたその身体を慈しむように抱き締めながら、再び高まってきた下半身の疼きを正直に口にした。
「あ・・・また、私・・・ああ・・・」
「俺も・・・一緒に、いこうな?」
頷く瞳を横目にして、腰の動きを荒げていった。
二人の結合部分からは白濁した大量の愛液が溢れ、瞳の肛門を伝ってシーツを濡らし、乾く暇すら与えないほどに何度も何度もディープキスをした二人の口元は唾液で濡れたまま。
ずっちゃずっちゃという、いやらしい水音を部屋に響き渡らせながら、二人は同じ到達点を目指し、ただ只管快感のみを追求する動物と化していた。
奥が、奥が凄く気持ちいい
やだ・・・また、いきそう・・・
どうしてこんなになっちゃったんだろう、私の身体・・・
何も考えられない
何もしたくない
ただこのまま、一緒に・・・いけたなら・・・・どんなに・・・
「瞳、愛してる」
岬さん、だからダメだって・・・こんなにされてる時に、耳元でそんな事言ったら・・・・
私・・・ダメになっちゃう・・・
瞳は岬の身体を抱き締める両腕に力を入れ、そして、両脚で彼の腰を挟み込んだ。
女として、強い男の精を取り込む為の無意識の行為。
彼女の神経はドロドロに溶かされ、体中が子宮になったような気がした。
「あああああっ!イクッ!・・・イクイクイクイクッ!イクゥッ!」
両腕と両脚でギリギリと彼の全身を締め上げ、真下が見えるほど顔を仰け反らしてブリッジの態勢で絶頂を迎える瞳の膣の奥に、3度目とは思えない量の射精をする岬の表情は快感で歪んでいた。
前日同様、線路沿いの一本径を歩いて自宅へ向かう瞳。
歩いて30分程の距離で彼女は宮條瞳に戻ろうとする。そう、和希の瞳に戻るのだ。陽の当たる場所へ。
身体に残る違和感は昨日ほどではない。が、それは自分の身体が岬の身体に「馴染んだ」という事実である事に気付き、彼女は顔を曇らせる。
和希と結ばれてから2年、今まで和希だけに捧げてきたこの身体が、わずか数回抱かれただけで上塗りされてしまいそうな恐怖感に、彼女は戸惑っていた。
違う、先生は違う
先生はそういうのじゃない
彼の存在は私の存在そのもの。私の存在理由が彼そのものなんだから
二人は一つ、切り離せないんだから
美咲さんのとは、全然違う
セックスとかじゃないんだ
彼は崇高な人。私にとって、何にも代え難い存在
和希の事を思い浮かべ、彼との将来を想像する。
自然と笑が溢れ、温かい気持ちに包まれる。
彼が瞳にとって、世界でダントツの一番の存在である事を確信する。
彼女の足取りは軽くなり、途中から早足になった。
会いたい・・・先生に、早く会いたい・・・・
彼女の偽らざる気持ちだった。
4人で夕食を取っている時の事。
「お姉ちゃんと和希君、試験終わるまで会わないんだって?」
箸を止めて怪訝な表情をして葉月が聞いてきた。
「そうよ。先生、今回で受からなきゃいけないもんね?」
「うん。絶対に受かるよ」
「ふ〜ん」
不機嫌そうにご飯を口に運ぶ葉月。
「でもさ、会えるからそれが励みになる、って事ないの?」
瞳は少し考えてから答える。
「会える日を励みにして今頑張る、って事なんだよ」
「え〜、なんかよく分かんない、それ」
「会えないって言ったって、御飯の時はこうして会えるし。お子たまには分からないかもね〜、この侘び寂びは」
笑いながら返す瞳に、頬を赤らめながら抗議する葉月。
「何それ、そんなの分かりたくないし!」
「まあ葉月は彼氏と常に一緒じゃないとダメだもんね〜」
「違うし!あいつが煩く付きまとってくるだけだし!」
真っ赤になる葉月を静止する母。
「二人共、馬鹿なこと言ってないで早く食べなさい」
「はい・・・」
バツが悪そうに下を向いて返事をする姉妹を見て、和希は思わず吹き出しそうになった。
「だって、本当に二人共よく似ているから」
和希と母が笑う中で恥ずかしそうに俯く二人。
帰りが遅い父が食卓にいなくても、いつも笑いの絶えない宮條家は、和希にとって安らぎの場所であり、理想でもあった。
瞳ともこんな家庭が築けたらどんなに幸せだろう・・・
俯く瞳を見ていると、そんな心が通じたのか、ふと視線を上げる彼女と目が合った。
恥ずかしげに苦笑いする瞳。和希も真っ赤になって思わず俯いてしまった。
「瞳、あ、あのさ、今度の土曜日、参考書買うの付き合ってくれない?」
「え?いくいく!お母さん、いいよね?」
「いってらっしゃいよ」
「やった、やった、デートだ」
本当に嬉しそうに呟く瞳を、遠慮気味に微笑みながら見つめる葉月。
「あ、ごめん、でも夕方から空手の稽古なんだ」
「え・・・・何それ・・・・」
「ごめん、実践的な稽古だから、審査の前に絶対出ておきたくて。でも朝早くから出かければさ、大丈夫でしょ?」
「うん・・・分かった。じゃあ、6時出発ね」
「え?・・・」
瞳以外の3人が同時に反応し、そして大爆笑。
「本屋さんやってないし」
食事を終え、門の外まで和希を見送りに出た瞳は、彼に近づいて話しかけた。
「先生あのさ、土曜日、本当に早く出ようよ」
「でもお店やって・・・」
言い終わらない内に瞳は彼の耳元に唇を寄せて呟いた。
「二人で、ラブホ、行っちゃったりとか?・・・」
「・・・・・」
何も反応できず、目を丸くして彼女を見ることしか出来なかった。
視線を横にずらしながら、真っ赤な顔でもじもじと後ろ手に組む彼女を見て、自宅前にも関わらず思わず抱きしめてしまった。
「分かった、約束な」
「うん」
すぐそこのアパートまでのほんの少しの距離を、何度も何度も振り返りながら手を振る和希と瞳を二階の窓から眺めていた葉月は、携帯を取り出して彼氏にメールを打った。
なんか無性にあいつに会いたくなっちゃった・・・本当、幸せ光線出しまくりだから、あの二人・・・
3日後、久しぶりに二人は都内繁華街でデートをする事になる。そこで重大なハプニングが二人を待ちうけている事も知らずに。
Comments
クレーム入れまくって自分の好みの方向に持って行こうとする人間はどこにでもおるからほどほどにスルーしたらええよ
わしもここの投稿作品からNTR読み物にハマった人間やから応援してるで
まあいつもおかずにしてるんで
これからもオナシャス
是非、そのパターンも読みたいのだが。
エロイからいいじゃねえか。
ここでいただいたコメントには、概ね応えられると思います。