217 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/03/31(水) 14:04:07 ID:fQlPSnsr [1/4]
double cross 《Satomi-SIDE》

 黒木くんと再会したのは、中途入社。
 大学時代のサークルの後輩が、突然同じ課に配属されて驚いたけど、何だか懐かしい気持ちになった。

 人懐っこいところは相変わらず。
 でも、学生の頃の頼りない感じはちょっと陰をひそめて、男っぽくなってた。
 中途とは思えないほど仕事慣れも早くて、職場の人間関係にもすぐに馴染んだみたい。
 特に佐伯課長には可愛がられて、飲み会からプライベートまでつき合わされてる。

「里美先輩がいるとは思わなかったです」
「え〜っ? あたしに会いたくて転職したんじゃないのー?」

 冗談めかしたけど、黒木くんが昔あたしのことを気にかけてたのは、何となく知ってる。
 直接何かいわれたわけじゃないけど、当時の彼氏からも「黒木がお前のこと好きらしいぞ」っていわれたし。

「イヤ、ホント、知らなかったです。偶然ですよ」

 あたしが卒業してから4年も会ってないのだから、今さら話なのに、何だか少し慌てた素振りがおかしかった。
 ちょっとカマかけると必死に否定する癖。
 こういうところは学生のときと変わらないなあ、って。

 黒木くんが、あたしの薬指に気づいて、

「それ?」
「あっ、うん。結婚したんだ」
「そうなんですか。それも全然知らなかったです。相手は久坂先輩とか?」

 久坂――というのは、あたしの元カレ。学生の頃付き合ってた。
 元カレと黒木くんとあたしで、よく遊んだりもした。

「何その懐かしい名前。違うよ。黒木くんの知らない人」

 旦那とは2年前に結婚。
 友達の紹介で、知り合ってすぐに同棲をはじめて、式も披露宴もやらずにそのまま入籍した。
 極めて親しい人に連絡しただけだったので、黒木くんが知らないのも当たり前。
 あたしが28になるまで子供は作らない約束で、仕事はそのまま続けてる。

 黒木くんは、あたしが結婚してることにひたすら驚いてた。

「苗字は成瀬になったから」
「下の名前は?」
「同じに決まってるでしょ。他の人の手前もあるから、下の名前で呼ぶのやめてよ」

 別に会則も厳しくないサークルで、何故か黒木くんだけは「高橋先輩」とか「里美先輩」と律儀に呼んでた。
 “センパイ”から“成瀬さん”に呼び方を変えるのは、最初は違和感があったみたい。

     ×     ×     ×     ×


218 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/03/31(水) 14:06:56 ID:fQlPSnsr [2/4]
 佐伯課長の下、黒木くんと同じチームになって、一緒にいる時間が増えた。
 携帯の着信もメールも、いつの間にか黒木くんからのものが一番多くなってる。
 課長も「お前ら、ウマ合ってるよな」なんて、変に感心してる。

「成瀬さんが結婚してて、マジ、ショックですよ。俺、憧れてたんで」
「黒木くん、あたしのことエロい目で見てたもんねー」
「ないない、それはない。ないですって」
「スカートの中、チラ見してたし」
「いや、だって、久坂さんの部屋行くと、先輩フツーにミニスカとかショートパンツなんで。目がいっちゃうでしょ」
「マジで目がイッてた」
「もう、勘弁してくださいよー」

 結婚して2年も経つと、惰性で生活している部分も出てくる。
 黒木くんと昔話をしてると、自由で楽しかった頃を思い出す。
 彼があたしを想ってたこともあって、擬似恋愛的に、しばらく忘れてた軽いときめきを楽しんでる部分もあった。

     ×     ×     ×     ×

 関係が変化したのは、ある飲み会の席で。
 トイレの前ですれ違ったとき、肩を黒木くんにつかまれて、「俺、間に合わなかったですね」っていわれた。
 すごく酔っ払ってたけど、目が真剣だった。
 あたしの知らない、黒木くんの男の子じゃない顔。
 正直、ドキッとした。

 帰りの方角が一緒だったので、タクシーで相乗り。
 佐伯課長から「黒木を頼むよ」といわれるくらい、彼は泥酔していた。
 途中で、「成瀬さん、旦那さんとうまくいってますか?」って聞かれた。

「うん。なんで?」
「俺の入る隙間、ないですか?」
「あったら怖いじゃん」
「……」

 不意に抱きしめられた。

「ちょっと、黒木くん、酔いすぎ」
「……」

 無言で、首筋に指をはわせてくる。
 少し反応して、ビクッとなった。

「先輩」

 “センパイ”に戻ってる。

「先輩のこと……抱きたいです」
「なにいってんだか」

 突き放そうとしたら、逆に顎を引き寄せられて、強引にキスされそうになった。

「怒るよ、もう。タクシーの中だってわかってる?」
「……スイマセン」

 それからどちらも一言も喋らず、ドライバーさんも喋らず。黒木くんが先に車から降りた。
 あたしは、夫以外の男の人から久しぶりに欲望をぶつけられて、ドキドキを止めるのに必死だった。

 それから黒木くんとはギクシャクしてしまって――。

     ×     ×     ×     ×


219 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/03/31(水) 14:11:02 ID:fQlPSnsr [3/4]
 残業では、黒木くんと二人になることが特に多い。
 気まずいし、旦那も残業が続くといい顔しないから、会社には業務を他の人に分散してもらうよう願い出た。

「お前ら、喧嘩でもしてんのか?」佐伯課長が心配してる。

「いえ、主人から残業を減らせないかといわれて…」
「いよいよ子供でも作る気か」
「課長、それ半分セクハラ」
「セクハラで上等だ。訴えても払うカネないぞ」
「えーっ、おカネ持ってそうなのになー」
「3人もガキいて、カネなんかあるかよ。お前も子供はほどほどにしとけ」

 課長は軽口を叩きながらも、あたしの申し出を受け入れてくれた。

     ×     ×     ×     ×


220 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/03/31(水) 14:13:21 ID:fQlPSnsr [4/4]
 その日、課に残ってたのは、また黒木くんとあたしだけ。
 時計が8時を回った頃、黒木くんがいった。

「この間は、すいません」
「……」
「俺、酔ってて。でも、大学時代に先輩のこと好きだったのはホントのことで」
「知ってるよ」

 黒木くん、あたしにダイレクトに返されて、顔真っ赤になってる。

「先輩にまた会えてうれしかったんですけど、“成瀬さん”って聞きなれない苗字で呼んでると、昔好きだった人を
 奪われたような、おかしな気持ちになって…」

 こういう甘酸っぱい感覚は長らく忘れてたので、くすぐったいし、正直なところうれしい気持ちもある。
 ただ、ヤバイ雰囲気になりそうというか、彼の切羽詰った顔見るのが何となく辛くて、背中を向けた。

「これからあたしの残業少なくなるし、二人だけで顔合わせる時間が少し減ったら、気持ちも落ち着くでしょ」
「先輩、異動になるって話も聞いたけど…」
「うん。そうなるかも」

 いい終わらないうちに、背後から抱きしめられた。
一年前のこと。
 あたしの勤めている会社に
「黒木くん!?」
「タクシーの中で言ったの、あれ本心ですから」
「ちょっと離して」
「俺の知らない誰かに先輩が抱かれてると思ったら、気が狂いそうです」

 無理やりあたしを振り向かせてキス――。
 顔を背けても、何度も何度も唇を奪われた。

「やめてよ!」

 顔を固定されて、耳を甘噛みされた。
 首筋を這うように指でなぞってくる。

「首と耳、弱いんですよね? 久坂先輩から聞いて知ってますよ」
「ちょっと、やだっ」
「どんなに派手なケンカをしても、耳と首を攻めたら里美は落ちるって、久坂さんが言ってました。
 あのときも、先輩がどうやって感じるか聞かされて、死にたかった」

《あのとき、って…?》

 耳の中に黒木くんの舌が入ってくると、体の力が抜けそうになった。
 私が崩れたのか、それとも黒木くんに押し倒しされたのか。フロアの上に倒れ込む。
 あたしの両足の隙間に、彼の足が割って入る。
 床は冷たいのに、太ももに触れた黒木くんの股間は、熱く、硬くなっているようだった。

      ×      ×     ×     ×


233 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/01(木) 16:05:38 ID:GbYVXf2f [1/7]
「やめて、お願い」

 いつもは上から目線なのに、こんなときに強くいえない。
 哀願するあたしの声を彼の唇が塞ぐ。と体の奥のオンナが首をもたげる。
 両手はがっちりと床に釘付けにされて、身動きが取れないでいる。
 あたしが顔を背けると、耳と首にキス。それに反応したら、また唇へのキスの繰り返し。

「いやだってば」
「口ばっかり。全然抵抗してない」

 そういわれて、ドキッとした。
 もう、力が入らなくなってる。
 あたし、少しずつ感じてる。

 いつからか、SEXは義務でするものになってた。
 忘れていた求められる悦びを、体と心が思い出しはじめてる。

「里美さんが卒業する前の最後の合宿」
「?」
「林の中で、久坂先輩とキスしてるの見ました」
「えっ、うそっ」

 ドキッとした。

「もうあんな思い、したくない」
「見たの、あれ?」

 あたしも覚えてる。
 散歩の途中で求められて、誰かに見られたらどうするのって言ったけど、キスされてあっさり流されたこと。

「辛くて、すぐその場を離れた。里美さんがうっとりした顔でキスしてるの、見てられなかった」

 見上げると、黒木くんが泣きそうな顔してた。
 それを見て、少し胸が締め付けられた。

「バック好きなんですよね?」
「ちょっと、何いってるの」
「お尻叩かれると、いい声で鳴くって」

 ――元カレから、どこまで聞かされてるんだろう。
 彼氏は粗野でデリカシーに欠ける人だったけど、こんなことまで他人に話してるなんて思わなかった


234 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/01(木) 16:07:07 ID:GbYVXf2f [2/7]

 釘付けにされた両手が自由になると、かわりにスカートの中に黒木くんの手が侵入してきた。

「いやいやっ、ホントにやめて。誰か来ちゃう」
「来なかったら、最後までしてもいいんですか?」
「……」

 強く見つめてくる黒木くんに、はっきり否定の言葉を告げられない。

「目、潤んでますよ」

 ゆっくり黒木くんの顔が近づいてくる。

 さっきまでの強引なキスじゃなくて、優しくタッチするような感触。
 反応を探るような動きに、あたしも同じように返す。
 互いを求め合うようになるまで、さして時間はかからなかった。

 さっきまで聞こえなかった、粘膜が交わる音がオフィスに響く。
 自然に彼の首に腕を回して、脳が溶けるような痺れに溺れる。
 心の中で響いていた警報が遠ざかっていく。

 黒木くんが、あたしのブラウスのボタンを外しはじめた。

「学生のときは、先輩のブラの線が透けてるだけで興奮したのに」

 ブラに指をひっかけて、

「見ますよ」

 そう予告されたのが恥ずかしくって、乳首を見られる刹那、あたしは顔を逸らした。
 結婚してはじめて、旦那以外の誰かに肌を晒した瞬間――。
 黒木くんの息を飲む音が聞こえてくるみたいだった。

 黒木くんが、あたしの胸の先端を味わいはじめる。
 声、我慢できない。
 やんっ、やんっ、って甘えて鳴いた。

「やっと感じてる声聞けた。すげー可愛い。これだけでイキそう」
「お願い、待って。誰かくるよ」
「もう止まらない」
「――どっか行こ」
「それって、抱かれてもいいってことですよね?」
「……」

「一度だけ」そう言って、あたしは黒木くんのモノになる約束をした。

     ×     ×     ×     ×


235 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/01(木) 16:08:26 ID:GbYVXf2f [3/7]

 ――ただいま。
 ――おかえり。

 それさえ、まともに喋れないんじゃないかと思うくらい、家に着いたときのあたしは混乱していた。
 旦那の顔を見た瞬間、罪悪感で胸がいっぱいになったけど、意外に話を合わせることができるのに驚いてる。

「今日はまた随分遅いな」
「ん、でも、もう残業は少なくなる予定だから」
「そうなの?」
「会社に話したら、わかったって。主婦特権じゃないの? ウチの会社、そのへん割りと融通利くから」

 今日、求められたら、どうしよう。
 疲れてる、っていえばいい。
 それでも求められたら?
 結局、その日はなにもなかったけど、ベッドに入ってからも眠れずに悶々としてた。

 さっきまで、大学時代の後輩に弄ばれてたなんて、横で寝ている夫は思いもしないだろう。
 そしてあたしは、黒木くんの強引さを繰り返し繰り返し思い出して、また濡れていた。

     ×     ×     ×     ×


236 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/01(木) 16:10:38 ID:GbYVXf2f [4/7]

 ホテルの部屋の黒木くんは、いつもの彼とは別人だった。
 人懐っこい顔は消えて、ひたすら冷たい目をしてる。

「一度だけだからね。これが最初で最後――」

 あたしがそういうと、

「最後なら、俺の好きにしていいですよね」

 有無を言わせない口調。完全に邪魔の入らない環境になって、遠慮が消えたみたい。
 あたしは小さく頷いた。

「――跪いて」
「えっ!?」

 いきなりフェラさせるのは、大学の頃の元カレが好きだったこと。
 黒木くんは、あたしが当時どうされていたのか、おそらく全部知ってる……。

「口でしてください」
「……シャワー浴びてないし」
「するんだ」
「……」

 言われるままに彼の前に膝をついて、ベルトを外した。
 懐かしい感覚。
 今の旦那は普通の、慈しむH。
 元カレは、女を支配するようなSEXだった。
 旦那を含めて6人と経験あるけど、色んなことを覚えこまされたのは、その元カレと付き合ってた頃。
 黒木くんは、自分が聞かされたやり方であたしを征服するつもりだってわかった。
 そしてあたしは、こういうの、もともとキライじゃない……。

 目の前に黒木くんのがある。
 何もしてないのに、そそり立ってる。
 いつも笑顔の絶えない彼とのギャップに心臓が高鳴った。


237 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/01(木) 16:11:56 ID:GbYVXf2f [5/7]

 ゆっくりゆっくり、あたしは彼に舌を這わせた。

「音立てて」
「……はい」

 言われるままに、舌と唇で淫らな旋律を奏でる

「最初はじっくり周りを味わって。いきなりくわえないで」
「……」

 いつもは敬語の彼が、あたしに命令してる。
 いつもはざっくばらんなあたしが、彼の命令に抗えず従ってる。
 目は閉じてたけど、黒木くんの視線を感じる。痛いくらい。

「高橋先輩が、俺のに舌絡めてる」

 心なしか声が上ずっていた。昔憧れていた女を膝もとで奉仕させて、興奮しているんだってわかる。
 高橋はあたしの旧姓。
 黒木くんにとって、あたしは今でも高橋里美なんだ。

「旦那にもこうやってるんですか?」
「どうでもいいでしょ」
「答えろよ」
「……跪いたりしない。そういうことさせる人じゃないから」

 そう言ったら、いきなり口の中に押し込まれた。
 喉の奥に嫉妬心をぶつけるように、黒木くんが腰を前後させはじめる。
 旦那は絶対しないこと。
 でも、あたしはこうする男を過去に知っている。

     ×     ×     ×     ×


238 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/01(木) 16:28:03 ID:GbYVXf2f [6/7]

「あまり遅くなったら、旦那に何かあったと思われるから」

 あたしがそういうと、黒木くんはすぐに脱がせにかかった。
 下着を全部剥ぎ取られ、閉じた膝に手がかかる。
「待って」という間もなく、一瞬で足を割られた。
 まだ愛撫らしい愛撫も受けてないのに、ひどく濡れてるのが自分でもわかる。

「すげー可愛い」
「いやだ」
「里美の、バック好きのおまんこ」

 そう言われて、すごく恥ずかしかった。
 ホントに、黒木くんが黒木くんじゃなくなってた。元カレがのりうつったみたい。

「やめて。どうしてそんなこというの?」

 どうしてと問いかけたけど、あたしがこうされるの好きだって、黒木くんは聞かされてるんだ、きっと。

「同僚の前でM字になってどんな気分?」
「恥ずかしいよ」
「濡れてる。フェラで感じたの?」
「……そうじゃないけど」

 彼があたしに見せ付けるように、ペニスをしごいた。
 いつもは屈託なく見えても、一度欲望に火がついたら、やっぱり彼も男なんだと思った。
 女のあたしが一歩退いてしまうほど、猛々しい感情を隠してるんだ。

「抑えきれない。たっぷり鳴かしてやる」
「お願い、優しくして。なんだか怖いよ」

 あたしの声を無視して、彼が乱暴に覆いかぶさってくる。
 いきなり突き立てられた。「ズブッ」って音が聞こえそうなくらい。いきなり深く。
 反応したくない気持ちが霧散するように、体はのけぞって、声が漏れた。


239 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/01(木) 16:37:41 ID:GbYVXf2f [7/7]

「すごい、おまんこトロトロしてる」
「バカ」
「見てよ。センパイの本気汁が俺のに絡んでる」

 見ると、彼のモノがあたしの愛液で白く濁ってた。
 こんなになること、滅多にない。結婚してからは、たぶん一度も。
 自分でも驚いたし、恥ずかしくて逃げ出したかった。

「久坂先輩とのときもこんなに白くなったの?」
「いやだ、なに聞かれても答えないよ、もう」
「口ごたえするな。白くなったの?」
「……なった」
「旦那とはどう?」
「なったことない…です」

 元カレのことはともかく、夫のことを持ち出されるとたまらない気持ちになる。
 黒木くんが動くたび、罪悪感ごと貫かれてる感じ。
 いけないとわかっても、比べてしまう。
 黒木くんのはすごく硬くて、気持ち良さと同時に、切り裂かれてるみたいに感じた。
 あたしは声を押し殺すのに必死だった。

「我慢して、可愛いね」

 激しく突いてはこずに、何か試すかのように、ゆっくりしてくる。
 もっと乱暴にされるかと思ったから、意外だった。

「何してるかわかる?」

 黒木くんの問いの意味がわからず、あたしは首を振った。

「里美の弱いトコ探している」

 あたしを征服して昂ぶってるのか、“先輩”ではなく、呼び捨てになってる。

「もうやだ」
「ここ?」
「いやっ」

 何度も何度も繰り返してくる。

「ここ?」
「あっ!?」
「ここだ」

 黒木くんの勝ち誇った声。
 あたしは負けを自覚した。

     ×     ×    ×     ×


246 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/02(金) 12:46:02 ID:ZlWScI6D [1/8]

 スポットを見つけてから、彼が激しさを増してくる。
 もう、黒木くんにイカされるのは時間の問題というところで、夫の顔が脳裏にチラつく。

「許して。イキたくないの、お願い」
「ホントだ」
「……?」
「先輩の『許して、お願い』は最高だって、久坂先輩が」

 そんなこと言われたら、言葉での抵抗もできなくなる。
 それに“許して”って頼んでやめてもらったことってない。
 ホントは、哀願するあたしを無理やり突き放して欲しい。
 ねじふせられたい。そういうのが好き。長らく忘れていた感情だけど。

 最初に予告された通り、それからたっぷり鳴かされた。
 こんなに乱れたのは、いつ以来か自分でも覚えてない。

「…黒木くん、もう我慢できそうもない……イキそう」

 そういったあたしの唇を黒木くんの唇が塞ぐ。
 スパート間際のディープキス。すごく弱い。これをされるとワケがわからなくなる。
 こんなことまで知られてるのかな。
 手加減なしで突かれて、ついにこらえられなくなった。
 頭が真っ白になって、彼にしがみつき、快感の波が過ぎるのを待つ。

 グッタリ横たわったあたしを、黒木くんが四つんばいになるように促す。

「いよいよ、里美先輩の好きなバックだ」
「いやだよ。好きとか、そんなことないし」
「久坂先輩が里美さんを開発したって、何度も聞かされた。シーツに顔を突っ伏してイクッて知ってる。本当かどうか、確かめてやる」

 怒りに似た思いをぶつけられたような気がした。黒木くん、感情の統制が取れてない。
 バックは、あたしが好きなのではなくて、元カレの久坂くんが好きだっただけなのに。
 ただ、黒木くんはあたしが犯されてるのを聞かされて、ずっとトラウマみたいになっていることはわかった。

「初めてHする相手にお尻向けるのはイヤだよ。そんな恥ずかしいのやだ。お願いだから…」

 傷ついてた黒木くんの気持ちとか、恥ずかしい状況とか、色んなことがない交ぜになって、自然に涙こぼれた。

「……先輩」

 黒木くんが毒気を抜かれたように口ごもる。

「でも俺、このまま帰れない」

 ゴムを外した自身のアレを、あたしの眼前に突きつける。
 それでおさまりがつくならと、彼のモノを丁寧に口で愛した。

「口に出すよ」

 イヤイヤするあたしの髪の毛を掴んで、激しく揺さぶってくる。
 うっ、と呻いてから、黒木くんがあたしの口の中に精を放った。
 最後の一滴まで搾り出すように彼がビクつくと、その度に口の中の液体が濃くなっていく。
 あたしは、全部を口で受け止めたあと、ティッシュの上にそれを吐き出した。

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247 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/02(金) 12:46:56 ID:ZlWScI6D [2/8]

 シャワーを浴びて、服を着るまで、会話らしい会話はなかった。

「昔、久坂くんと何があったのか知らないけど、これで満足だった?」

 あたしがそういうと、黒木くんがバツの悪そうな顔をする。
 熱が冷めたように、普段の彼に戻ってた。

「……スイマセン」
「謝るくらいなら、こんなことして欲しくなかった」

 彼は何か言いたそうだったけど、あたしは背中を向けて部屋を出た。
 怒っているように見えたかもしれない。
 けど、そうじゃなくて、本気になって感じてしまって、どうしていいのかわからなくなったから。
 いつも彼に対して上から目線のあたしが、弱い部分を見せてしまった。

 外に出たら出たで、旦那のことを思い出す。
 どんな顔して会えばいいのか。
 足取りは重く、少し歩くたびに考えて立ち止まった。

     ×     ×     ×     ×


248 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/02(金) 12:47:58 ID:ZlWScI6D [3/8]

     ×     ×     ×     ×

 翌日、黒木くんと会社で顔を会わせた。

「昨日は何ていうか、昔の嫉妬とか、すごく積もってるものがあって、やり過ぎでした」

 誰もいないのを見計らって、謝ってくる。昨日の荒々しさは微塵もない。

 あたしは答えない。
 今彼と目を合わせたら、心臓が口から出てきそうな感じ。
 本当は会社も休みたかった。
 旦那の顔見るのも辛かったし、でもイキナリ休んだら心配するだろうし、仕事する以外に逃げ場がない。

 昼前に佐伯課長に呼ばれて、

「残業の件、もうちょっと我慢してくれよ。再来週辺りまでに、成瀬の負担を減らせるよう指示はするから」
「あ、はい」

 こうして課長と話している間も、デスクワークしている間も、黒木くんの視線を感じる。
 廊下ですれ違ったとき、「もう少しフツーにして!」と声をかけた。

「すいません。成瀬さんには迷惑かけないようにします」

 彼は小さくなって頭を下げたけど、

「でも、昨日のこと、忘れられないです」

 小声でそう告げられた。

 あたしも、忘れられそうにない。
 普段はいたってフツーの彼が、ベッドの上では別人になる。
 そのギャップを思い出すと、たまらない気持ちになる。
 長らく忘れてた気持ち。強い男性に組み敷かれる心地良さ。
 いつもは対等の関係でも、夜の狭間では翻弄されたい、という願望は昔からあった。

「今度、食事に誘ってもいいですか。久坂さんと俺の間で何があったか、ちゃんと話しておきたいので」

 黒木くん、何だか決意の面持ちって感じ。

「いいよ。それで仲直り。そのかわり変な期待しないで」とあたしは答えた。

 そういいつつも、正直な気持ち、もう一度黒木くんに抱かれたいと思ってる。

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249 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/02(金) 12:48:43 ID:ZlWScI6D [4/8]

 黒木くんと関係を持ってから、もう半年になる。
 あたし、旦那に嘘ついてる。

「残業減らすんじゃなかったのかよ」
「あ、うん。そのつもりだったけど、うちのチーム、人員の数が厳しいからねー」

 ホントは、願い出通りに仕事の負担は減った。
 残業だっていってる日は、黒木くんと会ってる。

 旦那とのHに満足してなかったわけじゃない。
 心が離れたわけでもない。
 優しく愛してくれるのは、それはそれで心地いいし、気持ちもいい。子供を生むなら、やっぱり彼の子がいい。

 でも、夫や元カレに嫉妬して激しくしてくる黒木くんは、とても刺激的だった。
 ベッドの上で感情をコントロールしきれない彼を見ていると、愛おしい気持ちになる。
 昔は浮気なんて冗談、なんて思ってたけど、罪悪感のあるSEXは麻薬のような味がした。
 一線を越えるか、踏みとどまるか。
 大抵の人は踏みとどまるのだろうけど、あたしは一線を越えてしまった。

「今晩、大丈夫?」

 黒木くんにそういわれると、期待するようになってる。

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250 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/02(金) 12:49:36 ID:ZlWScI6D [5/8]

「お前ら、ケンカしてたんじゃなかったの?」

 佐伯課長が訝しげな顔をするほど、傍目に見て黒木くんとの親密度は増していた。
「学生時代からの付き合いはわかるけど、結婚してるんだし、誤解されないようにしろよ」と釘を刺された。

 いつも“成瀬さん”と呼ばれているあたしは、彼と二人きりになると“里美”になる。

 黒木くんが好きなのは、予告H。
「今日、○○するよ」と、口頭・メール・電話で事前に告げられる。

 最初は、「今日、写メ撮るよ」がはじまり。
 次は、「顔にかけるから」。
 その次は「おもちゃ使うからね」という具合。
 元カレがあたしにしたことを、必死にトレースしてるんだってわかってる。

 言ったことは、あたしがどんなにイヤがっても必ず実行する。
 予告されるとドキドキして、実際にされることを仕事中でも考えてしまう。
 いつその瞬間が訪れるのか、待ち望んでいるあたしがいる。

 この日の予告は、動画。
 いつものホテルの部屋、黒木くんが用意したビデオカメラの前で、イヤッてほど後ろから突かれた。

「バック、好きでしょ。いいかげん白状しなよ」
「…うん、好き…ヤラれてる気持ちになる…」
「旦那と違う肉棒でヤラれてる」
「いつもそんなことばかりいって」
「久坂さんもこうして里美のお尻の穴見てたんだ」
「もういや。やめてよ」
「こうやって辱められるのが好きななくせに」

 シーツを掻き毟らないと耐えられないほど激しく突かれて、カメラの前で突っ伏して乱れ鳴いた。

 黒木くんは、あたしが後ろが好きだって今も思い込んでいて、すごくこだわっている。
 本当は別に好きじゃなかった。もっと密着するのがよかった。
 でも、黒木くんの前で四つんばいになって旦那のことで責められると、やっちゃいけないことをしてる気持ちが高まる。
 いつの頃からか、ホントに後ろから犯されるのが好きになってた。
 彼は、あたしに恋してるというより、学生時代の復讐みたいにあたしを弄ぶ。
 きっと当時もこうして、想像の中であたしを好きにしてたんだと思う。彼氏に嫉妬しながら。
 その感情のぶつけ方が、たまらない。

 でも、行為は激しいのに、終わった後は相変わらず“先輩、後輩”。すぐにあたしのペースになる。

「旦那は気づいてない?」
「うん。大丈夫だよ」
「旅行行けない?」
「うーん、一泊なら、あの人の出張中に。スケジュール聞いておくから、それからね」
「温泉入ってゆっくりしたい」
「うそ、あたしを一日中おもちゃにするのが目的でしょ。全然ゆっくりなことない」
「昔から、遠慮なく図星さしますよね」
「黒木くん、エッチだもんね」

 困った顔した彼の頬に、軽くキスをした。

     ×     ×     ×     ×


251 名前:double cross《Satomi-SIDE》 投稿日:2010/04/02(金) 12:50:37 ID:ZlWScI6D [6/8]

 旅行の日取りが決まると、また黒木くんの“予告”がはじまった。

「旅行で、飲ませるから」
「飲ませるって、なに? お酒?」
「酒なら俺より里美の方が強いじゃん」
「じゃ、なによ?」
「精子」
「それってひどくない?」
「だめ、飲ませる。飲んだことあるって知ってる」
「……」
「旦那のはどうなんだよ」
「……あるよ。何度も。生理のときはいつもそう」

 黒木くんが嫉妬するってわかって、わざという。

「またビデオも撮って、今度は俺の女になるってカメラの前で誓わせる」
「もう、そんなことばっかりいって」

 言いながら、嫉妬されてることを心地良く感じてる。
 もっと嫉妬して欲しい。もっとあたしを求めて欲しい。

 旅行は、いつもと勝手が違うホテルの和室。
 彼の上で腰を振りながら、「もう離れられない」っていわされた。カメラ目線で。

 深夜、二人で散歩して、杉林の中に連れ込まれた。
 長いキスのあと、跪くように命じられて、フェラ。

「木に手をついて、お尻こっちに向けて」

 愛撫もそこそこに、コンドームをつけた黒木くんがあたしを後ろから楽しむ。
 すぐにどういうつもりかわかった。
 黒木くんが、サークルの合宿で見た光景の再現――。
 キスしてるの見てすぐ逃げたっていってたけど、本当は最後まで見てたんだ。
 当然、この後何をする気なのかも、あたしは知ってる。

 さんざんあたしをイジメ抜いたあと、黒木くんはゴムを外してあたしを再びしゃがませ、口の中に射精した。

「――飲めよ」

 そう命令されて、元カレのときのように、わざと喉を鳴らして黒木くんが放出した液体を飲み込んだ。
 元カレより少し甘くて、旦那より濃く、喉に引っかかった。

     ×     ×    ×     ×


252 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/04/02(金) 13:13:36 ID:ZlWScI6D [7/8]
double crossを書いてる者です。
ここまでで前半終了、折り返しです。
規制で自宅からアゲられず、暇をみつけて外からアップしてます。小出しになってスイマセン。
全部で2万5千字程度あり、そのほとんどが場面省略のないエロパートなので、読み物としてはかなり冗長だと思います。
さらに《Satomi-SIDE》が終わったら、《Kuroki-SIDE》を予定してました。まだ書いてないけど(つーか、書かないかも)

長すぎてスレチのような気もしてきたので、どこか他所にうpしたほうがいいですかね?


<<Preview : Next>>

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