359 名前:大神竜一郎 投稿日:2010/01/16(土) 06:14:12 ID:4VVKwF0w

          ペイフォワード
            安藤美香 〜後編〜   
                       大神竜一郎

 節分も過ぎた頃のある土曜日、週末。
トゥルルルルルー……トゥルルルルルー…
誰もいないオフィスに電話が鳴り響く。俺意外、誰もいないオフィスに。
眠りの妨げになった電話をイライラしながら取った。
「はい、……もしもし。」
「冴島クン?」
 電話の声は上司の安藤さん。下の名前は確か…美香。
「寝てたでしょ。」
「いえ…。」
 自分のデスクでうつ伏せになり寝ていたとこだ。
電話越しとはいえ鉄の安藤の声で緩めてたネクタイを締め直した。
 それにしても安藤さんは勘がいい。良すぎて怖いぐらいだ。
寝てたのは声でなんとなく分かったにしても、どうして休みの日に
オフィスに来てるって分かったんだ?
 まー、理由っていうとあんたに無理な量の書類を今週中にまとめるように
言われた分の仕事が残ってたからなんだけどな。
「寝てた……よね?」
「……はい。」
 この囁くような言い方。受話器な為、直に耳に入ってくる。
安藤さんが、`鉄の安藤`と呼ばれるのは鉄のように冷たいという意味と、
鉄は時に刃物になる、という意味らしい。入社して初めの頃は大げさだあなと
思っていたがプロジェクトを一緒にしていくにつれ、頷けるようになった。
「すみません…。木、金曜と二日間全然眠ってなかったもんですから。」
 ていうか、眠れなかったのはあんたのせいなんだぞ。
ブラインドから差し込む夕日が物悲しく感じる。
「言ってあった仕事は終わったんでしょうね?」
 終わったから寝てたんだろうが!悪いか?などと言えず、
「はい、さっき終わって。で、うとうとして…ついデスクで。」
「出来たかどうかは、ここからは見えないからね。」
「いえ、出来てますって。」
「どうだか……。ま、週明けの月曜日に提出してくれればいいから、
 もし、出来てないんなら明日を使って完成させておくように。」
 全く信用されていないのか。
「あ、誰か来たみたいだから。」
 安藤さんは電話をきった。
「……………。」
 ムカツク女だ。絶対結婚したくないタイプの女だ。

 大抵の男は女に命令されるのが嫌いだ。しかもああいうキャリアウーマン
私できる女なのよタイプ。男と女が本当に平等だと思ってるタイプだ。
人間としては平等だが、社会においては平等ではない。これが俺の思想だ。
安藤さんは俺のこの思想に合わない。
 でも安藤さんの全てが悪い訳ではない。容姿はバツグンだ。
黒くシャープな眼鏡が似合うその小顔は
今のアーティストで例えるとアンジェラ・アキに似ている。
三十歳に見えないぐらい綺麗で。今年新卒の俺より二つ三つ上かなと
思ってたぐらいで。スタイルもいい。パンツルックを上手く履きこなす
スラッとした長い足。キュッと上がったヒップ。引き締まったウエスト。
バストは小さい方だが………AではないにしろBぐらいか。

 だけど、どれだけ容姿がバツグンでも性格が悪けりゃダメだ。


360 名前:大神竜一郎 投稿日:2010/01/16(土) 06:15:14 ID:4VVKwF0w
「クソッ!」
 てか、なんだ?さっきの電話。まるで俺が書類まとめてないって言い草は!
デスクの上には出来上がったレポートがある。二日間全く眠らずに仕上げたものだ。
これを否定されたみたいで、正直ムカツク。ていうか否定してるよな、ハッキリと。
週明けの月曜に提出しても、どうせ日曜に仕上げたんだろと言われるに違いない。

 なら今日、直接渡してやる!

 俺はデスクの引き出しに仕舞っていた名簿を取り出した。
確かこの夏、同じプロジェクトの時名簿を作ったんだ。
ここには携帯番号と住所が書いてある。これを見れば家に行って直接渡せる。
 急に行って迷惑だろうがそんなの俺の知ったことじゃない。
要は俺の逆鱗に触れた…だ。

 住所を確かめた俺は、安藤さんの家に向かった。


 ピーンポーン
玄関のチャイムを鳴らす。
夕方の四時。別に訪問して悪い時間じゃない。
『安藤晴信…旦那か。安藤美香、安藤太郎。確か十歳の子供がいるんだったな。
 子供産んだなんて全然見えねーよ。あのプロポーションだもんな。』
 ガチャ、扉が開き中から安藤さんが顔を出した。
「?冴島クン?」
「すみません、お休みのところ。」
「どうしたの?……家教えたっけ?」
「夏の時の名簿で調べて。」
「そう。………で、用件は何?」
 鉄の安藤らしい言い方だ。
「レポートが完成したので、是非見ていただこうと。」
「私、月曜って言わなかったっけ。」
「はい………すみません。」
 何謝ってんだ俺。
「ここじゃなんだし、入って。」
 開きかけの扉を俺が入れる分、開けてくれた。
「失礼します。」

 情けない。レポートを投げつけるぐらいの勢いで帰ろうと思ってたのに、
部屋にお邪魔する事になるなんて。
 スリッパを借り安藤さんが先を歩くリビングの方へ進む。
俺の前を歩く安藤さんのヒップ。初めてジーパン履いてるのを見た。
いいケツしてるなぁ。
 黒いVネックのセーターにジーンズ。普段はこんなラフな格好をしてるのか。
毎日ビシッと決まってる会社の姿では想像つかないな。
だけど今のそのラフなスタイルも似合っている。
こういう姉貴がいたらみんな羨ましがるだろうなと思えるような容姿。
 だがあくまで容姿だけだ。性格は最悪。こんな女と結婚した旦那が
可愛そうに思えてくる。


361 名前:大神竜一郎 投稿日:2010/01/16(土) 06:16:25 ID:4VVKwF0w
 リビングに通されると二人の子供がTVゲームをしていた。
「安藤さんって子供二人いるんでしたっけ。」
「太郎が私の息子。で、達郎君が太郎の友達。」
 聞いてる俺はどっちが太郎でどっちが達郎かは分からない。
どうでもいい。興味無い話だ。
「こんにちは。」
 片方の子供が俺に挨拶をしてきた。
ようするにこっちが安藤さんの子供ってワケか。
なんだっけ、達郎か太郎か。

 広いリビングルームだ。まるでモデルハウスに来た感じだ。
天井も高い、よく見るプロペラみたいなのが天井で回ってる。
見上げると二階にいくつか部屋があるのが見えた。
 俺と同じ会社で何でこんないい家住めるんだ?
リビングの奥にはグランドピアノがある。
見える部分を完璧にしてるところが安藤さんらしい。
弾けもしないピアノだろ。部屋のインテリアさ。

 リビングのテーブルに腰掛けた。
「今日は家で家事ですか。」
「そうよ。昼からはスポーツジムに行って。」
 スポーツジムか。どうりで三十歳でそんなに引き締まってると思ったら。
そのプロポーションを維持するにはそれなりの努力をしてるってことか。
だがその整った顔は生まれつきなんだろうな。
「冴島クンは何してたの。」
「……仕事っスよ。電話、かけてきましたよねぇ。」
 ほんとムカツク。わざと言ってんのか!?

「ただいまー。」
 玄関の方から男の声がした。
どうやら旦那が帰ってきたようだ。

 スポーツのメディカルトレーナーの仕事をしてるらしく、かなりマッチョ。
歳の頃は安藤さんより上か、だいたい三十ちょっと位か。
安藤さんが若く見えすぎるってのもある。どう見ても二十五、六に見えるほどだ。
 旦那の気遣いで俺は夕食をよばれることになった。
どうしても愛妻の手料理を食べさせたいらしい。まあいい、タダなら。

 料理ってのは作る人の真心がこもってないと美味くない。
それは食べる側も同じで、作ってくれた人への感謝がないと美味くないものだ。


 予想に反し、結構美味かった。俺に感謝の気持ちがあれば
もっと美味く思えたかもしれない。
「どうだ、美香の料理は美味いだろ?」
「え、ええ……。」
 認めたくないって気持ちと、認めざるをえない気持ちが半々だ。
俺の言葉で満足そうにニコニコしてる旦那の安藤晴信。
 安藤さんとは違う形でムカツク。てっきりもっと肩身の狭い旦那を
想像してたのに。こうも幸せそうにされると……。
「ワタシと美香は幼馴染でね、大学も一緒で。」
 妻の事大好きオーラが滲み出てる。
きっと旦那は妻しか女は知らないのかもしれない。
 そんな旦那を一発で凹ませる話が俺にはある。


362 名前:大神竜一郎 投稿日:2010/01/16(土) 06:17:36 ID:4VVKwF0w

 俺と安藤さんは、一度だけキスをした事があるんだ。

 あれは入社した四月の歓迎会での事だ。合コンのノリの専務がいて
ビール三杯続けて一気飲みしなきゃ罰ゲーム。罰はこの課のの女社員の中から
一人選びキスする。どこが罰だと思うかもしれないが……それは選びようで罰になる。
 俺は酒に強い方じゃない。ビール三杯は無理だった。
で、選んだのが安藤さん。どう見ても安藤さんが一番綺麗だったから。
黒くシャープな眼鏡からはインテリジェンスな香りがする。
その眼鏡の奥の、一重だが美しすぎる切れ長の瞳。その意思の強さを表すような眉。
そして形整った唇。アーティストのアンジェラ・アキのように透明感のある美しさ。
 何も知らない俺が指名すると、渋々キスする事を許してくれた。
 
 そしてお互い目を瞑り唇と唇を合わせ、キスをした。

 安藤さんとキスしたのは一度だけで、キスはおろか身体も指さえも触れていない。
 
 梅雨明けの新人研修の頃だろうか、安藤さんの事がムカツキ始めたのは。
六月には`鉄の安藤`と呼ばれる所以が分かってきた頃だった。

 そんな事を思い出すと、奥さんを寝取った気持ちになってくる。
俺、酒の席とはいえあなたの妻とキスをしてしまいました。

 まぁいい、キスしたことは俺の心の中だけに留めておこう。

「美香、冴島さんにピアノ聞かせてあげて。」
「?」
 安藤さんがピアノなんか弾けるのか?
「うーん……最近全然弾いてないからなぁ。」
 さっそく言い訳の準備ですか。部下にみっとも無いとこ晒したくないんだろう。
安藤さんが晴れない顔のまま、ピアノに座り蓋を開けた。
そっと鍵盤に指をそえる。
「………………。」
 タンー……タララー……

「!?」
 ショパンの幻想即興曲
俺は言葉を失った。繊細すぎるほどのショパンのこの曲を。
激しくも儚く、どこか淋しげに奏でている。

 旦那が自慢したくなるわけだ。

 トゥルルルルルルー
ピアノの音を遮るかのように、安藤さんの携帯電話が鳴った。
「美香、お前の携帯鳴ってるぞ。」
 旦那さんがピアノを弾く妻の所までわざわざ携帯を持って行ってあげてる。
手を止め旦那さんから携帯を受け取り、安藤さんが電話に出た。
「ハイ、安藤です。………ハイ、……ハイ。」
 どうやら仕事の話のようだ。


363 名前:大神竜一郎 投稿日:2010/01/16(土) 06:18:33 ID:4VVKwF0w
 安藤さんが電話で話してる間、旦那さんが俺に問いかけてきた。
「美香、職場ではどうだ?頑張ってる?」
「ええ。」
「気が強いから前に出すぎて嫌われたりしてないかなぁ…。」
「自分にとってはとても尊敬する上司です。」
「そうか、よかった。」
 ホントに安心したような旦那さん。
まさかみんなに嫌われてます、なんて言えないよな。
「一度でいいから、美香の働いてる姿を見たいなぁ。」
 心から妻の事を愛してるんだなあ。

 安藤さんが電話を終えたようだ。
「冴島クン、仕事よ。」
「え…?」
 安藤さんがピアノの蓋を閉じる。
「専務と一緒に、今から坂本コーポの接待よ。」
 なんで俺まで。土曜日の休み返上して仕事してたのに今度は接待かよ。
安藤さんは着替えるため二階の部屋に行った。
 サラリーマンって楽じゃないなぁ。

 階段から降りてきたグレイのスーツ姿の安藤さん。
その服は俺にとって見慣れたものだが、旦那さんにとって唯一見ることの
出来ない時間の始まりを意味する。
「美香。」
「今日はダメ。冴島クンが来てるから。」
「?」
 旦那が拒む安藤さんの手を引っぱり、唇に一瞬だけキスをした。
「いってらっしゃい。」
「ああ………。」
 安藤さんは俺と顔を合わせないようにり、先にリビングルームを出た。


 俺の乗ってきた車の中ー

「場所はどこです?」
「恵比寿の美郷亭。」
「わかりました。」
 俺はキーを回しエンジンをかけ走り出した。


「旦那さんとのキス…仕事行く時に必ずやるんです?」
 右折する為のウィンカーを出して赤信号で停車した時
助手席に座る安藤さんが言った。
「冴島クンに…関係あるのかな?}
 らしい冷たい返し方だ。頬でも赤くして照れれば可愛いものを。
「関係ないですけど…俺、旦那さんに悪いことしたなって。」
「……悪いこと?」
「飲み会で俺と安藤さん、キスしたじゃないですか。」
「仕事でね。」
 なかなか崩せないな、その冷たい表情。
「じゃぁ今日も接待で誰かとキスします?専務も来るし
 まずそういう接待になると思いますよ。」
「私の弱みでも探してるつもりかもしれないけど……信号、青になってるよ。」
「あ……。」
 ハンドブレーキをとき車を走らせた。
下手に安藤さんを刺激しただけかもしれない。後が恐いな……。


364 名前:大神竜一郎 投稿日:2010/01/16(土) 06:19:45 ID:4VVKwF0w

 美郷亭ー

 高級料亭での接待。こちらは僕と安藤さんと専務、
坂本コーポの方は役員一名とその部下二名。
「これはお美しい人ですな。一度お相手して頂きたいものだ、わっはっはっはっ。」
 先方はかなり酒が入っている。飲んでないのは六人いて俺ぐらいか。
「どうですか?今晩安藤クンをお持ち帰りされては?」
「専務!?」
「ゲームしましょう。ビールの早飲み。」
 出たよ……。専務の合コンのノリが。五十も過ぎてそれはないだろう。
取引にも繋がるこの接待、先方の役員の方も酔ってるからいいものの。
「ビールぉ、安藤クンより早く飲めばぁ、胸お触りーどうですか?」
「専務、私既婚者ですよ!」
「えー!?そうなんですか?見えません。」
 役員の方も早飲みゲームに乗り気だ。
「でー、三回連続で勝てばお持ち帰り〜。」
「専務、私の話聞いてました?夫がいるんですよ。」

 結局、安藤さんはこのゲームに参加させられる事になった。
覚悟したというより、負けなきゃいい。という考えらしい。


 結果から言うと、安藤さんはお持ち帰りにならなかった。
酒は恐ろしく強い。でも相手は三人、ローテーションで挑んでくる。
単純に三倍飲まなきゃいけない事になる。
 最後に一度だけ、安藤さんが早飲みに負けた。向こうの一番若い男にだ。
俺を除く四人から罰ゲームコールをされて観念したのか、安藤さんは席を立ち、
「胸、だけですよ……。」
 と言うと
「いいっす。それより番号交換してもらえます?」
 この男、長期戦にもちこみ安藤さんを落とす気か。
目の前の蜜には手を出さず、蜜樽を手に入れようとするタイプ。
俺は心から安藤さんが落とされる事を願った。
 まぁ、無理だろうけどな。


 接待も終わり先方の役員は迎えの車で帰り、専務はタクシー。
早飲みで勝った若い男が、しきりに自分のロードスターで送ると言っている。
俺は心の中でその男を応援した。

 まてよ、俺の乗ってきた車で帰るなんて言われたらたまらん。
あの男を援護する意味でも俺はさっさと駐車場に向かい、自分の車に乗って帰った。


365 名前:大神竜一郎 投稿日:2010/01/16(土) 06:21:02 ID:4VVKwF0w

 自宅ー

 家に着いて二時間、接待終わってからだと三時間。
普通に帰れてたら今頃あのモデルハウスのような家で、
待ちわびた旦那と一緒だろう。

 時刻は深夜二時。
俺は安藤さんの家に電話をかけてみることにした。
トゥルルルルルル
「はい、安藤です。」
 声は旦那の安藤晴信のものだった。
気持ち分電話に出るのが早い気がする。
「冴島です。遅くに申し訳ありませんが安藤さんは、御帰宅ですか?」
「ん?美香は冴島さんと一緒じゃないんですか?」
「………。」
 ということは、まだ帰っていない。
「はぁ、自分は先に帰らせて頂いたので。」
「そうですか、もう少し待ってみます。」
 電話を切った。

 もう少し待つだって?今、夜中の二時だぞ。
今日はもう帰ってこないよ。

「フッフッフッ……。」

 何もないと思うか?


            終話へー

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