<<Preview : Next>>


333 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:01:58.54 ID:PMApMbzp [2/20]
【夫視点】

あの出張の日以来、智美は随分と積極的に求めてくるようになった。
自分から腰を振ったりなんて以前は恥ずかしがってしなかったのに、
今では自分が上になって快楽を貪っているほどだ。
しっかり者でキャリアウーマンの智美が俺の上に跨がって
裸体を踊らせている姿は非常にクるものがある。
頼めば口でだってしてくれるようになったし俺としては万々歳だ。
相変わらず朝にはさせてくれないけど、この調子ならそれも時間の問題だろう。
雨降って地固まるというやつだろうか。
駅のホームでいきなり抱きつかれたときは驚いたけど、
今ではあれも良い思い出だ。
夜の生活が充実しているおかげで仕事にも張り合いが出る。
そんな動機で働くというのは不純なようだけど男というのはそんなものだと思う。
自分の奥さんに欲情するなんてのはこの上なく健全なことなのだから。



334 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:02:17.90 ID:PMApMbzp 
【妻視点】

伸吾が出張から帰ってきてから二ヶ月が経った。
いろいろあったけど最近は少し伸吾の前で素直になれるようになったと思う。
そのきっかけが社長との一件だと思うと何とも複雑な気分だけれど。

「やあおはようトモミ。今日も綺麗だね。最高だよ」
今日も今日とて社長室に入った途端にそんな台詞に出迎えられた。
あれからはっきりとしたアプローチはかけてこないものの、
こうして言葉の端々に艶っぽいものを混ぜてくる。
「はい、おはようございます。今日の予定ですが……」
たぶん無表情を維持することには成功したと思う。
たまに本気でイラっときたり逆にどきりとしてしまったりもするけれど、
そのあしらい方にもいい加減に慣れてきた。
一応転属願いは出してみたのけど、受理はされなかった。
当たり前だ。
人事部が何を言おうとも最終の意志決定権は社長にある。
社長が「秘書を続けろ」と言ったら私達社員はそれに従うしかないのだ。
残る選択肢はこの会社をやめて他に移ることだけだが、
このご時世で今と同じような条件で雇ってくれる転職先が見つかるとは思えない。
結論として私がこの状況に慣れるしかないのだというところに落ち着いた。
なに、決して難しいことではない。
要はあれだ。
中学や高校の時に同じクラスの男の子に告白されて断ったようなものだと思えばいい。
少しは気まずい思いをするかもしれないが、
そのせいでいちいち登校拒否になったり転校したりする子はいないだろう。
みんな普通にやっていることなのだから、私にもやれない道理はない。


335 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:02:32.71 ID:PMApMbzp
「幸せそうですね、トモミ」
コーヒーを渡すときにふと言われた。
相変わらずの柔和な笑顔を浮かべたままだったので真意はよく分からない。
「おかげさまで。主人を愛していますから」
「そう。僕が入り込む隙間はなさそうですね。今のところは」
「永遠にありません」
「そうかな? 少しでも君が隙を見せたら遠慮無く踏み込みますから、そのつもりで」
「はいはい。いいから仕事に取り掛かって下さい」
すげなく言い返して社長室をあとにする。
ここまで言われて我慢するなんて、一般的には変なんじゃないかと思う。
けどこれも伸吾との生活を守るためだ。
なんせ一週間後には三回目の結婚記念日が待っている。
そういう時に少し贅沢できるのはやっぱり共働きならではだろう。
少なくとも子供が出来るまではこれを維持したいと思っている。

ただ、1つだけ気がかりがあるとすれば――
伸吾の主張中にあった社長との一件。
私はまだあれを伸吾に話していない。
何かあったわけでもなく一方的に言われただけなのだから、
無理に言わなくても裏切りにはあたらないかもしれないけれど。
やっぱり何のしこりもなく記念日を迎えるには避けられないことだと思う。
猶予はあと一週間。どうにか折を見て話さなくちゃ――



336 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:02:49.67 ID:PMApMbzp 
【夫視点】

ここ数日、智美が何かを話したがっているには気がついていた。
きっとそのうち智美のほうから話してくれるだろうと思って
敢えて触れないでおいたのだけど、一向にその気配がない。
もう結婚記念日は明日だ。
智美の話したいことというのも何かそれに関係してのことなのだろう。
だとすればその機会はもう今夜しかない。
なのに今夜も智美はテーブルの向こうで黙って視線を俯けているだけだ。
「……智美」
彼女がそこまで躊躇うような話というのが何なのか怖くもある。
だけど俺にしてみてもこのまま記念日を迎えたら心から楽しむことが出来ない。
智美が何かを抱えているというのならここで吐き出して欲しい。
「何か言いたいことがあるなら言ってくれ。
 お前のことならなんでも受け入れる自信はあるから」
俺がそう言っても智美はしばらく俺の顔をじっと見たまま黙っていた。
だけど、やがて――
「……うん」
と小さく言って、また俯いた。
そうしてぽつぽつと語りだす。


337 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:03:43.70 ID:PMApMbzp 
「あのね……うん。
 余計な前置きをするとまた言いにくくなりそうだから、はっきり言うね」
内気な女の子みたいな語り口調。
智美が弱気になっている時の特徴だ。
「伸吾が出張に行った時のこと、覚えてるよね?」
「ああ、うん。寂しい思いをさせて悪かった」
「ううん。それはいいの。それでね、あの時……
 伸吾が帰ってくる日曜日の朝に、私1人で買い物に行ったの。
 そこで……」
そこで、のあとで智美は一旦言葉を切って、じっと俺のほうを見た。
買い物に行った。そこで何かがあった。
智美が俺に言うのをこれだけ躊躇うような何かが。
何だろう。嫌なものが背筋を伝った気がした。
「社長に会ったの」
智美はそう言った。
社長。智美がそう呼ぶのは1人しかいない。
智美の会社の社長と言えば、雑誌なんかでもよく特集されているイケメンの実業家だ。
そして智美はそんな人の専属秘書をやっている。
その人に会った。日曜日に。買い物中に。プライベートで。
「で、ランチに誘われた」
「……そ、それでついていったのか」
どうにかひねり出した声は半分裏返っていて、それで自分の同様の度合いが知れた。
ランチに誘われて、そこで何があったのか。
俺にとって愉快な話ではないことは明らかだ。
「断り切れなくて。それで、店の中で一緒にご飯を食べて、そしたら……」
「そ、そしたら?」
「……好きだって言われた」
ひゅ、と息を飲む音。たぶん俺のものだったのだと思う。
妻が、智美が、他の男に好きだと言われた。
何を思えばいいのか分からない。
「そ、それで?」
「それでって……私の答えなんて、言うまでもないでしょ?」
智美は視線を落としたまま左手を撫でている。
その薬指で光っているのは、言わずと知れた結婚指輪。


338 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:04:02.23 ID:PMApMbzp 
ひとまず頭の中を整理しよう。
まず想定された最悪の自体ではなかった。
そこは安心していい。
今智美が話した内容が全てだったら浮気なんかじゃない。
目くじらを立てるほどのことではないと思う。
だけど――
「なんで、話してくれなかったんだ」
「え……それは、だって……」
「言いにくいのは分かる。でも、一言相談してくれれば……」
「お、怒らないで。私、伸吾に余計な心配をかけたくなくて……」
智美は元々細い型を気の毒なほどにすぼめている。
今にも泣き出しそうだ。
けど、どうしても納得ができない。
「そんなことがあっても、智美は俺に黙って仕事を続けてたんだな」
「……転属願いを出してもダメだったのよ」
「あれからもう2ヶ月だ。智美、分かってるのか?」
「な、何を?」
「俺から見たら……
 自分を好きだと言った男のところに、お前は2ヶ月間も通ってたのか!
 俺に黙って!」
はっ、と智美が息をのんだ。
まるでそのことに今初めて気がついたかのように。
「ち、違うの! 私、そんなつもりじゃ……
 今仕事をやめたら、伸吾に迷惑がかかると思って……」
「迷惑じゃないよ、そんなの。お前1人くらい俺の給料で養えるだろ。
 お前から見た俺ってそんなに情けない男なのか……」
こんなことくらいでここまで取り乱すなんて度量が小さいと我ながら思う。
智美に裏切られたわけじゃない。
けど悲しくなる。
結局のところ、智美は俺のことをちっとも信用してくれていなかったってことじゃないか。
「なんで黙ってたんだよ……
 すぐに言ってくれれば、俺だって怒ったりしなかったのに……」
「……ごめんなさい」
智美の話はこれで終わりのようだった。
どうにもいたたまれなくて、俺は席を立つ。
「……最後に1つだけ。それから今まで、何もなかったんだな?」
「うん。それだけは絶対に」
「なら、もういい。浮気されたとかそこまで酷い話じゃなくてよかった」
俺がくるりと背中を向けると、慌てて智美の声が追いすがってきた。
「し、伸吾? どこ行くの?」
「風呂に入ってくる。今日はソファで寝るから」
「え? で、でも悪いのは私なのに――」
「いいから」
それだけ言い残して俺はバスルームへと向かう。
心の奥底、一番冷静な部分ではちゃんと分かってるんだ。
智美は悪くないって。
全部俺のためを思ってのことだったんだって。
けどそう簡単に割り切れるものでもなくて。
気持ちを入れ替えていつも通りの2人に戻るには、もう少し時間がかかりそうだった。



339 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:04:26.55 ID:PMApMbzp 

【妻視点】

話さなければよかった。
眠れぬ夜を過ごしながらそう思う。
伸吾が怒ったのは私のまったく予想していない方向からだった。
彼は私が社長にああ言われたことそのものを怒っているんじゃない。
彼に――これから先ずっと共に歩んでいく一番大切な人に、そのことを黙っていた。
だから彼は怒っているんだ。
どうして私は気付かなかったんだろう。考えてみれば当たり前のことなのに。
結局のところ、私達はまだ本当の意味で夫婦になりきってはいなかったんだと思う。
(伸吾……)
ぎゅ、と毛布を掴んで寂しさと罪悪感に堪え忍ぶ。
リビングで寝ている彼のところへ行って泣きつこう。謝って許しを請おう。
何度そう思ったか分からない。
けどダメだ。そんなことをしたって今の彼は迷惑にしか思わない。
今はただこの孤独に耐えよう。
それがきっと私に与えられた罰なのだ。


340 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:05:05.21 ID:PMApMbzp 
明くる朝。
一晩明ければ少しは改善するだろうと思っていた私の考えは甘かった。
伸吾はほとんど口を聞いてくれない。
結局「おはよう」と「いってきます」の二言しか言わずに伸吾は出かけてしまった。
もちろんキスもなしだ。
彼の出て行ったドアの前に立ち尽くして絶望する。
まさか私達はこのまま終わってしまうのだろうか?
「……いや。そんなの絶対いや」
じんわりと目の前の光景がにじんできて、慌てて目元を拭った。
私には泣く資格なんてない。悪いのは私なのだから――


341 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:05:28.04 ID:PMApMbzp
「どうしたんですか? 今日はなんだか元気が無いですね」
案の定、社長は一目で私の心情を見抜いてきた。
もっといろいろ言われるかと思ったけど、
意外にも朝に顔を合わせた時はその一言だけだった。
少しほっとしながら社長室をあとにして事務仕事に移る。
こんな時でも仕事はいつもと変わらない。
それがありがたくもあり、虚しくもあった。

お昼前。ずっと迷っていたけど伸吾にメールを送ることにした。
『今晩のレストランの予約、キャンセルする?』
打ち込んでいて涙が出そうになったけど、どうにか書き上げて送信ボタンを押す。
もしこれで『そうしてくれ』と返ってきたら私はどうすればいいのかもう分からない。

それからいくらか時間が経って夕刻に差し掛かった頃。
メールの返事はまだ来ない。
気付いていないのか、無視されているのか。
前者であってほしいと思うけど、今の私ではそう信じることすら出来ない。
もう仕事もろくに手に付かなかった。
仕方が無い。
ちょうどそろそろ社長室の様子を見に行かなければいけない時間だ。
気分転換がてら、少し話をしてくるのもいいだろう。

社長室のドアをノックするとすぐに返事があった。
中に入って確認事項を事務的に読み上げる。
その間も伸吾の顔が頭の中をちらついて離れない。
携帯は秘書室に置いてある。帰ったらメールの返事が来ているだろうか。
ずっとそんなことを考えていた。


342 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:05:45.96 ID:PMApMbzp 
――だから、気がつかなかった。
社長がいつの間にか、私のすぐ側に立っていたことに。
「いけないな」
思いがけず近くからその声が聞こえて、ようやく私の意識が引き戻される。
たぶん、その時にはもう既に手遅れだった。
「言ったはずですよ。隙があれば遠慮なく割り込ませてもらうと」
社長はごく無造作に、まるでそうするのが自然であるかのように、
そっと私の頬に触れた。
伸吾のことばかり考えていたせいか、目の前の光景に頭が追いつかない。
私の頬に他の男が触れている。
伸吾が何度も触れて、でも昨日は触れてくれなかった私の頬に。
頭では理解しているのに体は反応してくれなくて。
その大きさと温かさに思わず身を委ねそうになってしまって――
だから、社長の顔がゆっくりと近付いてきたとき、
かわすことも顔を背けることもできなかった。
「んうっ?!」
唇と唇が重なって、ようやくことの重大さに気付く。
私、キスしてる。
伸吾じゃない男の人と。


343 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:06:11.15 ID:PMApMbzp 
「ん! んー!」
もがいてみても、いつのまにか腰と後頭部をがっちりと掴まれていて離れることが出来ない。
その間にも社長は無遠慮に私の唇をついばんでくる。
閉じたままの私の唇と自分のそれを角度を変えながら何度も触れさせ、
食むように挟み、ついには舌でなぞり上げてくる。
(いや……いや!)
毎日重ね合わせてきた伸吾のそれとは明らかに違う、別の男の唇。
違和感しかない。
この人じゃない、と全身が叫んでいる。
なのに逃げることが出来ず、ほとんど私はパニックになっていた。
どれくらいそれが続いただろうか。
やがて満足したのか、社長は忌まわしい抱擁をそっと解いた。
同時に、ほとんど無意識に体が動く。
上司であるはずの男の頬を引っぱたこうと振り上げた手は、しかし――
「おっと。それは困りますね。跡が残ってはこのあとの仕事に差し支えます」
あっさりと社長の手に受け止められた。
悔しいけど男の力には敵わない。
手の届かないところまで下がって、きっと目の前の男を睨み付ける。
「最低……ッ!」
社長の唇にはうっすらと私の口紅の色が残っていた。
そんな名残が無性に悔しくて悲しくて、ぽろぽろと涙が溢れた。
「私、わたし……あの人だけは、裏切りたくなかったのに!」
もう一秒たりともここに居たくなかった。
それだけ言い残して私は社長室を出た。
乱暴に閉めたドアから社長が追ってくることはなかった。


344 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:06:25.79 ID:PMApMbzp 
秘書室に戻ると全身の力が抜けた。
デスクに辿り着く前に、がくりと床に膝をついてしまう。
私、とんでもないことをしてしまった――
放心したまま虚空を見上げていた私の視界に、
ふとあるものが映り込む。
私の携帯電話。
着信やメールの受信があったことを報せるランプが灯っている。
よろよろと歩いて行って、縋るような気持ちでそれを手に取った。
来ていたのはメールだった。
差出人は――伸吾から。
『キャンセルはしなくていい。
 もう怒ってないよ。
 今日は2人でゆっくり楽しんで、それでみんな忘れよう』

じんわりと温かいものが胸の内側に広がって――
同時に罪悪感が渦を巻く。
伸吾はこんなにも私を愛してくれているのに、私はそれを裏切ってしまった。
「ごめんなさい……ごめんなさい、伸吾……」
誰も居ない最上階のオフィスで1人、私は涙にくれた。



345 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:06:43.99 ID:PMApMbzp
【夫視点】

智美はちゃんとメールを見てくれただろうか。
今晩もう一度きちんとお互いの気持ちを話し合おう。
それで2人で食事して――
そのあとは気分を変えて久しぶりにどこかのホテルに行くのもいい。
時間をかけてゆっくり愛し合って、それで昨日のことは忘れよう。
今までケンカをしたことがなかったわけじゃないけど、
次の日まで引きずるようなことは今までになかった。
だからきちんと話をして、これからのことを2人で考えよう。
といっても俺は別れる気なんて全くないのだけど――
「おい、高峰」
ふいに呼ばれて、俺の思考は一旦そこでストップする。
顔を上げると、同僚の酷く深刻な面持ちがそこにあった。
「……何かあったのか?」
「何かじゃねえよ。これを見ろ」
同僚が差し出してきたのは一枚の紙。
どうやらどこからか来たファックスのようだが――
「……え。これって――」
差出人はうちの取引先の1つでもある智美の会社。
その繋がりがあって俺が営業を担当している。
そこから来たというファックスの内容を大まかに言うとこうなる。
『前回の発注についてだが、注文の品とは別のものが届いている。
 今日中に無いと困るものなのですぐに手配して欲しい。
 不可である場合、次回から貴社との取り引きは無しにさせて頂く』


346 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:07:00.84 ID:PMApMbzp 
――そんなバカな。
読み終えて最初に思ったことがそれだった。
ちゃんと確認はしたのに。
これで間違いございませんね、と先方にも見てもらったはずなのに。
何故こんなことが起こる?
配送業者の手違い? いやそれにしたって――
「理不尽だよな。お前、今までこんなミスしたことなかったのに」
同僚が同情するような目を向けてくる。
それでいて、こいつは暗にこう言っているのだろう。「素直に従うしかない」と。
「くそ……今から手配するったって……」
時刻はもうすぐ5時。
今から手配にとりかかったところで今日中に用意出来るかどうか。
「智美……」
今さら今晩の食事に行けないと言ったらどんなに彼女は悲しむだろう。
何としてでも抜けたい。けど、これでは――
「そうか。お前、今日は結婚記念日だって言ってたっけ。
 けど……」
「分かってるよ」
誰かに代わってもらえばいいという問題ではない。
ウチの課全員が総出で対処にあたって、
それでようやく日付が変わるまでに片付くかという次元だ。
しかも課の職員みんなの手が空いているはずは当然ないわけで。
「……クソッ!」
やつあたりに、がん、とデスクをぶっ叩く。
とにかくやるしかない。
絶望的な気持ちで、俺は作業に取り掛かった――



347 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:07:20.85 ID:PMApMbzp
【妻視点】

6時。
私は社長に挨拶もせずに会社をあとにする。
あれから1人で泣いて、ようやく決心がついた。
この会社をやめよう。
今日伸吾に相談はしてみるけど、
彼が何と言うかはもう決まっているも同然だ。

社長にあんなことをされたことも、
どうするか散々迷ったけど、言ってしまったほうがいいだろう。
本意ではなかったのだと。
その上で伸吾の望むようにしてもらおう。
けどもし彼に捨てられたら私は一体どうなってしまうのか。
きっともう生きていけない。
そう思うとすごく怖いけど、昨晩の一件で私は決めたのだ。
もう彼の前で隠し事はしないと。


348 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:07:48.89 ID:PMApMbzp 
一旦家に帰って、レストランに行くための服装に着替える。
再び家を出て目的のビルに着く頃にはちょうどいいくらいの時間になっていた。
伸吾の姿はまだない。
お願い、早く来て――
そう思って待っていても、一向に愛しい人の姿は現れない。
いつの間にか約束の時間を5分過ぎてしまった。
そろそろ連絡してみようか、と思ったちょうどその時携帯が鳴った。
予想通り伸吾からだ。
「もしもし」
出来るだけいつもの調子を意識して平静な声を出す。
「伸吾、今どこ?」
『それが……ごめん、まだ会社なんだ』
「え……」
嫌な予感が駆け巡る。
まさか、来てくれないなんてことは――
『実はさ、お前の――いやそれはいいか』
伸吾は何かを言いかけて途中でやめる。
そんなことはいい。
早く言って。いつ来られるの?
ちょっとくらい遅れてもいいから――
『本当にごめん。今日は無理だ』
「…………」
絶句、というのはまさにこのことを言うのだろう。
言葉が出てこない。
伸吾は他にも何かを言っていたようだけど、耳に入ってこない。


349 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:08:15.50 ID:PMApMbzp 
「伸吾……どうして?」
『いや、どうしてって……俺も……』
「私のこと、嫌いになった?」
『違う! そうじゃなくて……』
「そんなに怒らなくてもいいじゃない! 
 私、自分で望んであんなことしたわけじゃないのに!」
思わず声を荒げてしまう。
周りのことになんてまるで意識が向かなかった。
『智美、落ち着いてくれよ。そういうことじゃ……』
「私、伸吾に言わなきゃいけないことがあったのに。
 それを言わないと、私達はダメになっちゃう……ッ!」
もう頭の中がぐちゃぐちゃだった。
昼間の出来事が脳裏に焼き付いて離れない。
伸吾じゃない男の感触がまだありありと唇に残っている。
なのに、伸吾は来てくれない――
『それが何なのか知らないけど、分かってくれよ。
 俺だって仕事なんだから……』
「仕事と私と、どっちが大事なの?!」
ああ――
やってしまった。
一番言ってはいけないことを言ってしまった。
真っ黒な絶望が胸の内に広がっていく。
『智美。それは……』
「ごめん、もう切る。それじゃ」
伸吾が「待て」と言っているのが聞こえたけど、構わずに携帯のボタンを押した。
それと一緒に、私が何より大事にしていたものがぷちんと音を立てて切れた気がした。


350 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/17(金) 15:08:28.70 ID:PMApMbzp
何故こうなってしまうのだろう。
伸吾への想いは今も変わらない。
ただひたすらにそれを貫けばいいと思っていた。
だけどそれは違ったのか。
きっと私には彼との生活を維持するために必要不可欠な何かが欠けていた。
かけがえのないものが全て失われてしまって、私は街中で独り、立ち尽くす。
昼間に思ったとおりだ。
伸吾を失った私はもう生きる気力すら沸いてこない。
このまま海にでも身を投げようか。
そんなことすら半ば本気でそんなことを思っていたその時だった。
「トモミ。酷い顔をしていますよ」
一体どこから現れたのか。
いつの間にか社長が私の目の前に立っていた。
「そんなあなたも素敵ですけどね。愛しています」
その言葉が、その笑顔が。
私をこの世界に繋ぎ止める最後の糸。
その時は、そう思ってしまった――



363 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:25:41.12 ID:S3fTl+Ky
【夫視点】

「本当にすみません! ありがとうございます!」
「いいから早く行け」という、
温かいんだか冷たいんだか分からない言葉を背中にうけながら俺はオフィスをあとにする。
なんと今日が俺達の結婚記念日だとしった課のみんなが、
「あとはやっておくから先に帰れ」と言ってくれたのだ。
同僚達には感謝してもしきれない。

「……あれ」
早速智美に電話をかけてみたけど、圏外だった。
電池切れでもしたのか、どこか電波の届かない場所に居るのか。
とにかく待ち合わせ場所に行ってみるしかない。

そうして予約していたレストランのあるビルの前。
智美の姿はどこにも見当たらない。
店のほうにも行ってみたけど、来ていないとのことだった。
仕方ないのでキャンセル料を支払って再び外に出た。
こうなると心当たりは自宅くらいしかない。

けど、自宅に帰ってみても彼女の姿はどこにもなかった。
仕事着のスーツはクローゼットに引っかかっている。
ガレージに車もあったし、一度帰ってきたことは確かなようだ。
そして多分予定通りに待ち合わせ場所へ行って、俺の電話をうけた。
で、そこから先は?
「どこに行ったんだ、智美……」
誰も居ないマンションの部屋で1人、俺は立ち尽くすしかなかった。



364 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:25:59.45 ID:S3fTl+Ky
【妻視点】

誘われるままに、社長とディナーを共にした。
もちろん伸吾と行く予定だった店とは別のところだった。
たぶん値段ももっと高いのだろう。
私はそこでひたすらに胸のうちをぶちまけながら浴びるようにワインを飲んだ。
あなたのせいでこうなったのだ。
社長に向かって何度そう言ったか分からない。
嫌な顔1つせずに社長は私の話に耳を傾けていた。
すっかり酔いが回ってしまっていたので、何を言ったのかはよく覚えていない。
だけど社長が「僕なら君をそんなに悲しませたりはしないのに」と
しきりに言っていたのだけは印象に残っている。

気がついたとき、私は社長の運転する車の助手席に乗せられていた。
どういう経緯でそうなったのかは覚えていない。
自分が眠ってしまっていたらしいこと、頭がまだくらくらとすること。
その2つしか分からない。
「気がつきましたか?」
前を見たまま社長が声をかけてくる。
返事をしようとしたけど、頭にモヤがかかっていて
「ううん……」だとかうめき声みたいなものしか出てこない。
「飲みますか?」
社長が差し出してきた天然水のペットボトルを一も二も無く受け取って、
ふたを開けるなり口をつけた。
冷えた水が喉を通って胃袋に染み渡っていくのを感じて、ようやく少し周りが見えるようになった。
今私が座っているシートは革張りで、足元もうちの車よりずっと広い。
中央にあるカーナビの周りには何なのかよく分からないボタンがたくさんついている。
きっともの凄い高級車なのだろう。


365 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:26:12.75 ID:S3fTl+Ky
ふと気がつく。
そういえばさっき私が受け取ったペットボトルは最初から封が開いていた。
中身も少し減っていたような気がする。
「飲みさしですみません。これしかなかったもので」
今さらながらに社長はそんなことを言う。
「でも今さらでしょう? 僕たちは一度唇を重ねた仲なのですから」
社長に悪びれた様子はない。
何か屈辱的なことを言われた気がするけど、どうでもよかった。
今どこを走っているのだろう?
外を見てみてもよく分からない。
私が通勤で通っている道ではないことだけは確かだ。
眠いわけじゃないけど、私はもう一度目を閉じた。
社長がどこへ向かって車を走らせているのか。
そのことに意識が向くほどには、まだ酔いはさめていなかった。


366 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:26:37.50 ID:S3fTl+Ky
「着きましたよ」
社長の声で再び意識が引き戻される。
眠くないと思ったくせに、また眠ってしまっていたらしい。
窓の外に目を向けると、薄暗い明かりの向こうにコンクリートの壁が見えた。
たぶんどこかの地下だろう。
「……ここは?」
「僕が住んでいるマンションのガレージです。さあ、降りて下さい」
「え、でも……」
頭はさっきよりいくらかはっきりしている。
今ここで社長と一緒に車を降りるのが何を意味するのか、それが分かる程度には。
「私、帰ります」
「ここから? どうやって?
 僕がこの車で君を家まで送り届けたら、いろいろ困ったことになると思うんですが」
「それは……」
確かにそうだ。
もしそんなところを知っている人に――
特に伸吾に見られでもしたら一巻の終わりだ。


367 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:26:58.79 ID:S3fTl+Ky 
「だったら、どこか近くの駅に――んうっ?!」
言い終わる前に、唇を唇で塞がれた。
伸吾じゃない男との二回目のキス。
うまく頭が回らずに、されるがままになってしまう。
社長は私の肩をぐいと引き寄せて深々と唇を重ねてくる。
抱擁は昼間ほど強くない。たぶん。私は逃げようと思えば逃げられた。
でもどうにも体がうまく動かずに、社長の胸に手を添えるだけに留まってしまう。
相手からすれば素直に行為を受け入れているとしか思われないだろう。
「ん……ふ……」
唇を閉じるのも間に合わない。。
ぬるりと唾液をまとわりつかせて社長の舌が入り込んで来たとき、その感触にぞくりと背筋が震えた。
たぶん悪寒ではない。じゃあ何なのか。
酔いはさめてきているはずなのに、頭に霞がかかったようにぼうっとしたままだ。
「ん……」
どうにか舌の侵入を押しとどめようとこちらも舌を突き出したら、
見事にそれを絡みとられてしまった。
くちゃ、ぴちゃ。
2人の粘液が絡み合っていやらしい音を立てる。
赤い2つの舌がまるで睦み合う男女のように絡み合う。
見えないはずなのにその様が如実に想像できてしまった。
「あ……はぁ……」
体の芯が熱くなってくる。
熱っぽい吐息はどちらのものか分からない。
(ああ……伸吾……)
世界で一番愛しい人の顔を思い出そうとしたけど、
口の中で動き回る舌のいやらしさにすぐかき消されてしまった。

それがどれくらい続いただろうか。
歯の裏側、舌の付け根。
もう社長の舌が触れなかった部分なんてないくらいにたっぷり私の口内をねぶり回して、
ようやく社長は唇を離した。
「ぷぁっ……」
名残を惜しむように、2人の唇と唇を透明な唾液の糸が結んでいる。
もうごまかしようもなく淫靡な光景だった。
体はいよいよ熱さを増している。
「部屋に行きましょう」
再び社長がそう言ったとき、ついに私は首を横に振ることができなかった――


368 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:27:24.55 ID:S3fTl+Ky 
「んっ……」
エレベーターの中でも再び唇を重ねた。
強引にされたわけじゃない。
あそこで頷いてしまった時点で、もう答えは出てしまっているのだ。

ばたん。
マンションのドアが閉まる音は、もう引き返せないという最後通牒だった。
1人暮らしだという社長の自宅は、やっぱり私達が住んでいるマンションなんかとは比べものにならないくらいに広い。
その部屋の中を社長に手を引かれながら素通りして寝室へと向かう。
寝室のベッドも、やっぱり私達二人が寝ているものより大きかった。
あの上で私は今から何をするのか。
分かっているはずなのにうまく頭が回らない。
社長はルームランプはつけずにベッドの側にある間接照明だけを灯した。
薄暗い部屋の中、ベッドの上だけがオレンジの光でぼんやりと照らし出されている。
「あ、あの……」
「さあトモミ」
短く言って、社長はするすると自然に私の服を脱がせていった。
女性の服の構造を知り尽くしているかのようにその動きは滑らかだ。
一体何人の女をこのベッドで抱いたのか。
これから私もそこに加わるのだと思っても、不思議なくらい抵抗感はなかった。
「あっ……」
ついに下着にまで手がかかったとき、
最後の抵抗として私は社長の手を押しとどめようとした。
だけどそんなのは形の上のものでしかない。
「さらけ出しましょう。お互いの全てを」
熱っぽい吐息に混じって耳元で囁かれたその言葉は、
ひどく淫靡に響いて私の脳裏を蕩かしていく。
気がついた時にはブラを外されショーツも足から引き抜かれて、
体を覆うものは何も無くなってしまった。


369 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:27:49.60 ID:S3fTl+Ky
一糸まとわぬ姿となった私を社長は軽々と抱き上げて、すとんとベッドの上に落とした。
上等なベッドが弾力豊かに私の体重を受け止める。
その柔らかさに包まれながら、社長がゆっくりと服を脱ぎ捨てる光景をぼんやりと眺めていた。
やがて社長の裸体が目の前に晒される。
引き締まった胸板にくっきりと分かれた腹筋。
そしてその下では――
(ああ、やだ……)
社長のそれはもうすっかり大きくなって、こちらに突き出すようにしていきり立っている。
見慣れた伸吾のものよりも一回り大きい。エラの部分がゴツゴツと張り出している。
あの部分はカリとというのだと確か伸吾は言ってた。
「どうしました、トモミ。もうこれが欲しいんですか?」
「あ……い、いえ……」
社長の言葉で自分がそれをまじまじと観察してしまったことに気がつく。
カッと顔が熱くなった。
同時に自分が恥ずかしい姿を晒しているのだと急に意識してしまって、
乳房と足の付け根を手で隠しながらきゅっとベッドの上で丸くなった。
「ふふ……かわいいですよ、トモミ」
社長は小さく笑って、そんな私に覆い被さってくる。
縮こまった私の両肩を掴んで上を向かせると、おもむろに唇を重ねてきた。
「んっ……」
三度目のキス。
もう裏切りは決定的だ。
抵抗しないといけないとは思うけど、
同時にもうここまで来たら今さらやめても一緒だという諦念も浮かんでくる。
「ん、ふ……」
車の中でしたのと同じか、それ以上に長い口づけ。
それが終わる頃には、体を隠していたはずの手はいつの間にかベッドに投げ出されていた


370 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:28:07.68 ID:S3fTl+Ky 
「きれいですよ、トモミ。想像以上だ」
「ああ……」
伸吾に見せるために磨いてきたはずの、私の体。
それが余すこと無く他の男の視線に晒されている。
羞恥と罪悪感で顔を覆いたくなった。
「さあ、愛し合いましょう」
そんな言葉を伸吾以外の口から聞くなんて、ほんの少し前までは想像したこともなかったのに。
社長は待ってなんてくれなくて、頬に、耳元に、首筋にキスの雨を降らせてくる。
言葉通り、それは「愛し合い」の始まりだった。
「んっ……」
耳たぶをぞろりと舌先で撫で上げられて、きゅっと閉じた口から思わず吐息がもれる。
「トモミは耳が弱いんですか?」
言われてもよく分からない。
他の女の子がどこで感じるのかなんて知らないから。
でも伸吾は私が反応するところを熱心に探して、見つけたら執拗にそこを責めてくるのだ。
そう、今ちょうど社長がしているように。
(私……こんな時に伸吾と比べるなんて最低だ)
罪悪感で胸が押しつぶされそうになる。
そんな私の胸中なんて知りもしない社長は耳への責めを続けてくる。
ゆっくりと耳の形に沿って舌先で嬲り回しながら内へ内へと。
舌による蹂躙は止まらない。
「はぁ……はぁ……」
吐息が熱い。
感じてはいけないはずの感触が体の芯から溢れ出ようとしている。
社長はひとしきり耳を責めて私の反応を楽しんでから、唇を下へと動かしていく。
手で脇腹を撫でながらうなじに唇を這わせ、すうっと背筋に沿って舌を這わせる。
「あっ……」
愛し合うという言葉通り、社長の行為には急性さというものが一切なかった。
そこが伸吾とは違うところだ。
伸吾もいつだって私を感じさせることに苦心してくれるけど、
結局は途中で我慢できなくなって「本番」に移るのだ。
そこが不満でもあり、それ以上に愛おしくもあり――
(私……何を考えて……)
最低だ、と思ったばかりなのに気付けば伸吾のことを思っている。
どれだけ私の中で伸吾の占める割合は大きいのだろう。
なのに今私は違う男の手に抱かれている。
心と体がまるで一致しない。


371 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:28:44.08 ID:S3fTl+Ky
「はぁ……」
そっと吐息を漏らす。
何を思ってみても、体は既に社長の行為を受け入れてしまっていた。

ゆっくりと内側に回ってきた唇が乳房をとらえた。
急いで先端に向かうことはせず、社長はその丸い形に沿ってざらついた舌を這わせてくる。
まるでその形を覚え込もうとするかのように、その行為は執拗に続けられた。
(ああ……やだ……)
いつしか、触れられてもいない先端が固くなってぴんと上を向いていた。
それは紛れもない不貞の快楽の証。
「ふふ……ちゃんと気持ちよくなってくれているんですね。嬉しいですよ、トモミ」
言って、ついに社長はその先端を口に含んだ。
「んっ!」
ぞくぞく、とその感触に体を震わせる。
焦らしに焦らされた上で与えられる性感は強烈だった。
無意識のうちに私の手が社長の頭に添えられている。
それは動きを押しとどめようとしているというよりは、
もっともっととせがんでいるように見えた。

社長はそこに吸い付いたまま舌でころころと転がたり甘噛みしたりと思うままに弄びながら、
もう片方にも手を添えてくる。
ゆっくりと掌で全体をこねくり回す。指で先端を挟んでこすり上げる。
その一つ一つの動きに私の体は面白いように反応してしまう。
「んっ! んっ!」
社長が動くたびにぴくんぴくんと震えてしまう体はごまかしようがない。
でもせめて声だけはあげまい。
そう心に決めて強く唇を引き結ぶ。
「敏感なんだね、トモミ。よく開発されている」
その言葉でまた伸吾の顔が脳裏に浮かんできてしまう。
さほど大きくないはずの私の胸を、彼は最高だと言ってくれる。
彼だって私の胸以外には触れたことなんてないはずなのに――
「ふふ……」
社長が小さく笑う。
私が何を考えているのか見透かしたかのように。
(この人は……)
最低だ。
そう思うのに行為を押しとどめることが出来ない。
心の隙間を満たして欲しいのか、ただ肉体的な快楽を得たいのか。
自分の心が分からない。


372 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:29:18.69 ID:S3fTl+Ky 
ひとしきり胸を責めたあと、社長の唇はゆっくりと舌へと向かった。
鎖骨をなぞり、おへその内側まで舌で舐めあげて――
その一つ一つで私をじっくりと昂ぶらせながら、ついにその下にある茂みにまで辿り着いた。
「あ……」
私は小さく顔をあげて、その様をじっと見つめていた。
私の恥ずかしい毛にもキスをして、そのまま下へは向かわずに一度脇道へ。
太股の外側にも唇をひとしきり這わせてから、
社長はおもむろに私の内股に両手を差し入れてくる。
「やっ……」
閉じた足にきゅっと力をこめる。
だけどそんなの、男の力の前ではか弱い抵抗だった。
「君の全てを僕にも見せて下さい」
そう言って社長は私の両足をぐいと押し開いた。
「あぁ……」
羞恥と諦めの吐息。
最も秘すべき場所が暴かれて間近から社長の視線に晒されている。
伸吾以外の男の視線に。
「だ、め……見ないで……」
抵抗は言葉の上でだけ。
すっかり芯から蕩かされてしまった私は、
ベッドの上でくてんと脱力したまま社長の行為に身を委ねてしまっている。
自分のそこがどういう状態になっているかの自覚はあった。
伸吾以外に与えられるはずのなかった感覚にとろかされて、
もう準備なんて必要のないくらいに潤っているだろう。
伸吾ならもう我慢できずに今すぐ本番行為を始めてしまうかもしれない。
だというのに社長はまだそこに触れることすらせず、おもむろに内股へと舌を這わせてくる。
「んっ……」
つつつ、ざらついた舌の感触が内へ内へと向かう。
その視線は私の顔と一番恥ずかしい場所を行ったり来たり。
私を昂ぶらせることの愉悦を楽しむ獣欲に満ちた視線。
そこに愛なんてものは一切存在しない。
やっぱりあの言葉は私を落とすためだけの方便だったのか。
そしてその意図通り、私はこうして社長に抱かれている。
そう思ってみても今さら屈辱感なんて沸いてこない。
胸の内にあるのは罪悪感と、ぽっかりとあいた大きな穴だけ。
決定的な部分へ向かってくる男の舌を押しとどめることは出来なかった。


373 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:30:04.70 ID:S3fTl+Ky
「うぅ……」
ざらついた感触がついにその部分の際まで到達する。
身震いしながら私はそれに耐えた。
半ば予想していた通り、舌はすぐに割れ目の内側へは向かわない。
まるで円を描くようにゆっくりと、まずはその周囲を舐め上げる。
「あ……はっ……」
その部分の下側、お尻のほうを通るときは特別じっくりと舌を這わされた。
たぶん私のそこから溢れ出たものを舐めとっているのだろう。
「んっ……んっ……」
声を殺す。
もう私がすっかり昂ぶっていることは隠しようがない。
だけどそれを自分から認めることだけはしたくなかった。


374 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:30:26.26 ID:S3fTl+Ky
「はぁ……はぁ……」
その円運動は三回ほど続いただろうか。
ようやく舌が離れた時にはもう私は絶頂寸前にまで押し上げられていた。
その部分の周りが社長の唾液と私の分泌物でぬらぬらと光っている光景が、
見えなくても如実に想像できる。
私が息を整えている間にも行為は続く。
その部分に両手の指が添えられたかと思うと、ぐいと左右に引っ張って割り開かれた。
「や、やぁ……」
伸吾の前でもあげないような弱々しい声。
みっともなく左右に引き延ばされた私のそこが
間接照明の淫靡な光で明々と照らし出されている。
いつも真っ暗な中でする伸吾との行為ですら、
こんなことはされたことがないのに。
「可愛らしい穴ですね、トモミ。
 人妻にしては色も随分と綺麗だ」
社長の声はいつもより上ずっている。
彼の目には私の内の内まで、
女が一番守らなければ行けない穴の奥まで見えてしまっているだろう。
「や、やめて下さい……」
あまりの羞恥で私はもう身動きがとれない。
何もされていないのに、視線に晒された穴の内側からまた新たに分泌液が流れ出るのを感じた。


375 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:30:54.56 ID:S3fTl+Ky 
「ふふ。焦らしてしまってすみません。
 僕もそろそろ我慢ができなくなってきましたが、1つになる前に一度イかせてあげましょう」
言って、社長はその部分の一番上にある敏感な突起にちょんと舌先で触れてきた。
「んんっ!」
包皮の上から触れられただけなのに、それだけで思わず達してしまいそうになった。
間髪入れず、指で開かれたままのそこに舌が侵入してくる。
複雑な構造をしたそこを丹念にじっくりと、ざらついた舌が舐め上げていく。
「んっ、んっ、んっ」
そこに触れて良いのは伸吾だけ。
そう決めたはずなのに、そこを他の男の舌で嬲られる感触に私は溺れていく。
社長の動きは相変わらずゆっくりだ。
円を描いて私の内側の全てを唾液でべとべとにしながら中心へと向かってくる。
そうしてやがてその穴さえも捕らえられた。
「んっ! んっ!」
留まることを知らないその舌は、無遠慮に穴の内側へ潜り込んでくる。
そこにねっとりとまとわりつくのは唾液か、私の分泌液か。
奥深くに入り込んだ舌は、私の中をちろちろといやらしく舐め上げる。
「んんっ、ンー!」
歯を食いしばってどうにか声を我慢する。
舌の動きは決して早くはない代わりに細かく丹念だ。
思わず腰が跳ね上がり、自分からそこを社長の顔に押しつけるような格好になってしまう。
もう指で押し割るまでもなく開ききったそこから一旦手を離し、
社長は粘度を増した私の分泌液を指ですくい上げる。
そして赤く充血した敏感な突起の包皮を剥くと、指先にまとわりついたそれをその突起へと塗り込んできた。
「んあっ!」
遂に我慢できなくなった声が漏れ出る。
絶頂はもうすぐそこまで来ていた。


376 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:31:17.37 ID:S3fTl+Ky
「いいんですよ、トモミ。いつでもイってください」
一旦そこから口を離して、社長は昂ぶった視線を私の顔へと向けてくる。
口の周りは私の分泌液でべとべとだった。
そうしながら親指と人差し指で私の突起をつまんでころころと転がしてくる。
「あっ! あっ! い、いや……」
「まったく、強情ですねトモミは。そういうところもかわいいですよ」
そう言って社長は再び私のそこに口をつける。
突起を責める指の動きをいよいよ早めながら、
私の中を舌でぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
ぴちゃぴちゃぴちゃ。
いやらしい音が異常なほど大きく聞こえる。
「あ、あああっ!」
(伸吾、伸吾、伸吾!)
愛しい人の顔を思い浮かべようとしても、与えられる感触に翻弄されきった頭ではうまくいかない。
せめて声だけは聞かせまいと、私は開いたままだった口を必死に引き結んだ。
そして中に溜まったものを吸い上げるように、社長がそこにきゅうっと強く吸い付いてきたとき。
「ンンンンーーーーッ!」
いつしか添えた手で社長の頭を自分のそこに押しつけながら。
全身をしならせて、私は絶頂に達した。
伸吾以外の男になんて与えられるはずのなかった、めくるめく快楽。
それに身を任せて全身を震わせる。
「あ、あ……伸吾……社長……」
どっちの名前を呼べばいいのか。
絶頂でとばされてしまった意識はいまだにはっきりとしない。


377 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:31:39.57 ID:S3fTl+Ky
社長は私が達したあとも名残を惜しむようにひとしきりそこを舌でなぞったあと、
ようやく口を離した。
見ればその顔には口の周りだけでなく鼻や目元にまで私の分泌液が飛び散っていた。
(ああ、私……)
「まさか潮をふくなんてね。僕の舌がそんなによかったですか?」
「や、やめて下さい……」
分泌液が付着したままの顔でいやらしく嬉しそうに笑う社長を見ていられなくて、
私はベッドの上で丸くなる。
社長はそんな私をぐいと上に向かせて唇を重ねてくる。
さっきまで深々と私の中に入り込んでいた舌が今度は口の中に潜り込んでくる。
夫でない男とここまでしてしまう私は一体なんなのだろう?
自分がひどくいやらしい女に思えてくる。
「ぷあっ……」
キスが終わって自分の舌が空気に晒されたとき、ようやく気付く。
私、自分から舌を絡めていた――
「さあ、トモミ」
ぐ、と社長が腰を密着させてくる。
下腹に熱い感触。
すっかりいきり立った社長のものが私に押しつけられている。
いつの間につけたのか、それは透明なゴムを被せられていた。
(よかった……避妊、してくれるんだ……)
ぼんやりとそんなことを思う。
ゴム無しでなんて伸吾とすらまだしたことがない。
でも、そういう問題じゃない気がする。


378 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:32:02.80 ID:S3fTl+Ky
「あ……」
先端が私の粘膜に触れる。
(私、本当にしちゃうの? 伸吾以外の人と……)
その時、ようやくにしてそこに思い至る。
もう決定的に伸吾を裏切ってしまったと思っていたが、まだ「セックス」そのものはしていない。
引き返すなら今しかない。
「ま、待って社長……」
顔を上げて今まさに結合しようとしているその部分に目を向けると、思わずぎょっとしてしまった。
(あ、あんなに大きいなんて)
最初に見たときはまだまだ最高潮ではなかったのだと思い知らされる。
一回りなんていうものじゃなく、伸吾のそれとは比べものにならない大きさだ。
「や、やめて……そんなの、入らない……」
伸吾のものですら私のあそこにはいっぱいいっぱいなのだ。
あんなのを受け入れてしまったら私が壊れてしまう。
毎日伸吾に抱かれていた頃の私にはきっともう戻れない。
「うん? ここまで来てそれは酷ですよ」
足を閉じようにも既に社長の腰は内側に入り込んでいる。
先端は私の粘膜と触れ合ったままだ。
その密着度のまま、社長はその先端で割れ目の中を上下にゆっくりとこすり上げた。
「やっ、やっ……だめ、待って……」
それが私の入り口に触れるたびに、恐怖とそれ以外の何がでびくんびくんと腰が震えてしまう。
私のそんな反応すら楽しいのか、社長は薄ら笑いを浮かべたまま腰を引こうともしない。


379 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:32:29.29 ID:S3fTl+Ky 
そして遂に私の腰を掴んでベッドに押しつけ、ぐっと力強く腰を押し出してくる。
「だ、だめ……ああっ!」
まずカリの部分までが入り込んで来た。
それだけで私がかつて味わったことのないほどの圧迫感と異物感がある。
「だ、ダメ……私……」
「いきますよ」
そして次の瞬間、社長はぐんと勢いよく腰を突き上げた、
「んううううううっ?!」
ずるずるずる。
そんな音が聞こえた気がした。
私の内側の肉を引き摺りながら入り込んで来たそれは、あっという間に最奥に到達する。
「あっ……かっ……」
ずん、と奥を突き上げられた衝撃で一瞬呼吸が詰まる。
ぷは、とようやく息をついてみても膣内に感じるとんでもない熱さと異物感は変わらない、
どころか増す一方だ。
(う、うそ……あんな大きいのが、私の中に……)
信じられない。
それでも私と社長の腰が密着した光景は間違いなくその事実を示していた。
「大丈夫ですか、トモミ」
社長は労るように私の前髪をかき上げて、唇を重ねてくる。
上と下で同時に繋がる。
伸吾以外の男と。
(わ、私……)
ついにやってしまった。
その罪悪感と絶望感が今さらながらにやってくる。
もう伸吾に愛してもらえる体ではなくなってしまった。
今はただこの行為に溺れる以外、私に出来ることはない。


380 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:32:57.99 ID:S3fTl+Ky
社長はキスを続けたまま、ゆっくりと腰を動かし始める。
まだ挿出はしない。
一番奥に入り込んだまま、私の感触を確かめるようにじっくりとかき回される。
「ん……ん……」
繋がった唇から吐息が漏れる。
それだけの動きなのに、私の体は逐一反応して社長を楽しませてしまう。
しばらくそれを続けてから、社長は唇を離す。
「少しは馴染みましたか? さあトモミ。天国へ連れて行ってあげましょう」
ゆっくりと社長のものが外へと向かう。
そして初めて入り込んで来た時と同じように、ずうんと勢いよく奥を突き上げられた。
「あううっ!」
思わず口から飛び出した声は、最初のように苦しげではなかった。
(え……まさか、これって……)
私のあそことは不釣り合いに大きい社長のもので貫かれる感触。
ただの違和感と圧迫感だと思っていたそれの正体に、私はその声で気付いてしまった。
「痛くはないようですね。続けますよ」
「ま、待って……んっ!」
最初の二突きのような急性さはなりを潜め、社長の大きなものが私の中でゆっくりと動き始める。
円を動きながら小刻みに私の中をかき回す。
「あっ、あっ、あっ……だめ、こんなの、だめ……」
やっと分かった。
私はただ心の穴を埋めて欲しかっただけだ。
決して、気持ちよくなんてなりたくないのに――
「何がダメなんですか? いい顔をしていますよ、トモミ」
よっぽど私の中が気持ちいいのか、社長の声はすっかり上ずっている。
それでいて腰の動きに急性さはまるでなく、細かく複雑に、
縦横無尽に私の中を責め抜いてくる。
「んっ、んっ……」
口と目を閉じて私はそれに耐える。
真っ黒に閉ざされた視界の中、私を犯す社長のモノの固さだけがリアルだ。
沸き上がってくる甘い疼きを堪えることが出来ない。


381 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:33:19.72 ID:S3fTl+Ky
「いいんでしょう、トモミ。何故そんなに我慢するのですか?」
「んっ、んっ、それが、ダメ……あっ……なんです……」
私の一番大事な部分を思うままに貫きながら、手で乳房にまで触れてくる。
こねくり回し、先端をつまみ、指先でピンと弾く。
まるでこれは自分のオモチャだと主張するように、社長の動きには遠慮がない。
その動きに合わせて私の乳房がいやらしく形を変える様が、
閉じた視界の先で見えた気がした。
「何がダメなんですか?」
社長は言って、ずん、と私の奥を突き上げる。
「んんっ!」
「ほら、言って下さい」
ずん、ずん、ずん。
続けざまに強く奥を突き上げられて、じいんと体の奥が痺れた。
「んんっ、んんっ……わ、私……気持ちよくなんて、なりたく…………ない……っ」
「どうしてですか?」
「だって……あっ……伸吾以外のもので、感じるなんて……」
そう、今私が受け入れているのは伸吾のものではない。
なのに快楽を感じてしまうなんてあってはいけないのだ。
「なるほど」
面白そうに言って、社長はまた腰の動きをゆったりとしたものに戻した。
強引に突き上げるのではなく、私を昂ぶらせる動きに。
「目を開けて下さい、トモミ」
「い、いや……」
「言うことを聞かないと痛くしますよ」
「そ、そんな……」
酷い、と思うけどまさに今犯されている私は言うこと聞く他にない。
怖々と目を開ける。
男の欲に目をたぎらせた社長の顔が間近にあった。


382 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:33:40.82 ID:S3fTl+Ky 
それを目に映した次の瞬間。
「ああっつ?!」
思わず声が跳ね上がった。
私の一番奥の左側。
伸吾が開発した、私の一番感じるところ。
そこを社長のものがずうんと強く突き上げてきたのだ。
「気付かないとでも思いましたか? ここが良いんですね、トモミ」
「や……やめて、そこばっかり……あっ、ああっ!」
そこを発見して、喜び勇んでそこばかり責めてきた伸吾の姿を思い出す。
私が感じると伸吾は喜んでくれる。
伸吾が喜んでくれたら私も嬉しい。
だから私は迷うことなく快楽に身を委ねていられた。
なのに、今目の前に居るのは――
「さあ、目を開いて見て下さい。今君の目の前に居るのは誰ですか?」
「あ、あ、あああっ!」
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
ひっきりなしに溢れる分泌物が濃度を増しているのが分かる。
伸吾のことをいくら思い出してみても、全身を駆け巡る甘い痺れはごまかしようがない。
「今君の中に入っているのは誰のものですか?」
「や、いやぁ……ひどい、こんなの、ひどい……」
社長の責めは激しさを増す。
一番感じるところを何度も何度も突き上げられて、
私は決して昇りたくない高みへと無理やり押し上げられていく。
「くっ……いい締め付けです、トモミ。イきそうなんですね」
敏感に私の変化を感じ取った社長は、私の背中に手を回して抱き上げてきた。
全身が社長の裸体と密着する。
伸吾以外の男と。


383 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:34:03.55 ID:S3fTl+Ky 
「あっ、ああっ、いやぁ……こんなの……こんなの……んうっ」
もう声を我慢する力すらなくした唇に社長が吸い付いてくる。
全てを重ね合った男と女。
伸吾との行為を思い起こさせる密着度で社長との行為は続く。
ぐちゃぐちゃに口の中をかき回されながら、
それ以上に激しくあそこを責め立てられる。
「んっ! んっ! んんんんーーっ!」
感じたくないのに。イキたくなんてないのに。
男の体温に全身を包まれて、女としての私が悦んでいる。
我慢に我慢を重ねた絶頂がいよいよ避けられないところまで来ている。
「さあ、僕の腕の中でイキなさい。イクんだ、トモミ!」
いよいよ私の絶頂が近いことを感じ取った社長が唇を離し、
ラストスパートをかけてくる。
「い、いやぁ……イキたくない……イキたくない……!」
長大なペニスによる強烈なストローク。
それが私を追い詰める。
「僕もイクよ、一緒にいこう、トモミ……!」
「やぁっ! あっ! あっ! あっ! ダメ、ダメェ……ッ!」
極限まで興奮した社長の声。
その腕に抱かれながら、私はどうすることも出来なかった。
ずうんと一突きされるごとに脳裏がしびれて何もかもが真っ白になっていく。
(ごめん……ごめんなさい、伸吾……)
流れ出た涙は昂ぶりからか、悲しさからか。
きっと私なんてもう愛してはくれないだろうけど。
愛する人以外のもので押し上げられる絶頂は罪悪感に満ちていた。
「あああっ! もう、だ……め……ッ!」
なのに、気がつけば自分から社長の背中に手を回していて。
伸吾以外の男を受け入れながら私はその時を迎えた。
「あっ! あっ! あっ! ああああああああッ!」
かつてこれほど声を張り上げたことがあっただろうか。
全身を快楽だけが支配する。
「くっ……」
絶頂に打ち震える私の中で、社長も達した。
どろどろに溶かされた意識の中、
何度も跳ね上がって精液を放出する社長のものの感触だけは強烈だった。
(い、いやぁ……)
ゴム越しだというのに、もの凄い量の粘液が放出されているのが如実に分かる。
伸吾以外を男の人を私の膣が気持ちよくして、放出させた。
その事実から逃れたいのに、社長は私の肩を抱え込んだまま離してくれない。
まるで種付けするかのように、びくんびくんとそれが跳ね上がる動きがすっかり収まるまで、
私達は全身をぴたりとくっつけたままだった。


384 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:34:23.16 ID:S3fTl+Ky
「ふぅ……」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
絶頂がおさまると、もう用は済んだとばかりにベッドに投げ出された。
伸吾は行為が終わった後もゆっくり時間をかけてキスをして、
最後には決まって「ありがとう」と言ってくれる。
そして私はとてつもなく満たされた気持ちになるのだ。
(なのに、私……)
こんな愛のかけらもない行為に没頭し、絶頂を極めてしまった。
そのことが持つ意味の大きさを思うと涙が出そうになる。
(伸吾……)
放心状態のなか、ぼんやりと愛する人を想う。
彼は今どうしているだろうか。
時計を見ればもう日付が変わろうとしている。
待ち合わせ場所から消えた私を探してくれただろうか。
もし彼が連絡をくれていたとしても、私は――
「……! そうだ、電話……っ!」
やっとのことでそこに思い至り、部屋を見渡す。
どこに置いたか記憶にはなかったが、私のバックは部屋の片隅でぽいと無造作に投げ捨てられていた。
うまく動かない体を無理やりに動かして、何も身につけないままそこへ歩いて行く。
社長の視線を背中に感じたけど、もう今さらだろう。
バックから取り出した携帯は何故か電源が切れていた。
深くは考えないことにする。
電源をつけて問い合わせをすると、メールが一件きていた。
伸吾からだ。
その内容を読んだとき――
本当の意味で、私は自分のしでかしたことの重大さを思い知った。


385 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:34:39.37 ID:S3fTl+Ky
『智美、どこに居るんだ?
 お前は俺達がダメになると言ったけど、俺はそんなふうに思いたくない。
 お願いだから帰ってきてくれ。俺はお前が居ないと駄目なんだ。
 愛してる』

「あ、あああ……」
なんということをしてしまったのか。
勝手に「もうダメだ」なんて思い込んで、勝手に自暴自棄になって。
もう取り返しがつかない。
こんなにも私を想ってくれる人を裏切ってしまった。
私が誰よりも愛している人を裏切ってしまった。

「ああああああああああああァァァァァッ!!!」

張り上げた声はもはや泣き声ですらなく、絶望の叫び。
自殺なんて比べものにならないほどの過ちを犯してしまった、
取り返しのつかない現実への絶望だった。



386 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:35:01.00 ID:S3fTl+Ky 
【夫視点】

ついに日付が変わった。
智美にはまだ連絡すらつかない。
一体どこで何をしているのか。
もう二度とここへは帰ってきてくれないのか。

思い出されるのは「社長」の顔。
智美を好きだと言った、俺なんかでは敵いようもない成功者。
(まさか、な)
どこを比べても「社長」より劣る俺だけど、ただ2つだけは負けていない自信がある。
1つは智美を愛しているという気持ち。
そしてもう1つは、自惚れじゃなしに、智美に愛されているという自覚。
夫であるために必要なものなんてそれで十分じゃないか。
「智美、早く帰ってきてくれ……」
もう何度目になるか分からないその呟きをまた漏らしたとき、
がちゃりと玄関のドアが開く音がした。
「智美――?!」
この部屋の鍵を持っているのは俺の他に彼女しか居ない。
玄関まで走っていくと、果たしてそこに待ち焦がれた愛しい妻の姿があった。
「あ、伸吾! ……っ」
智美は俺を見てこちらに駆け寄ろうとして――
だけど、何故か思い留まったように止まった。
そのまま下を向いて動かない。
「智美? どうしたんだ?」
「だって……あなたに申し訳なくて……」
その声が泣きそうに震えているのに気がついて。
一も二もなく、俺はその肩を抱きしめた。
「え……し、伸吾……?」
「いいんだよ、もう。俺のほうこそ悪かった」
何度も抱きしめた妻の細い体。
温かな温もりが全身に広がっていく。
もう三年も一緒に暮らしてきた仲なんだ。
言葉なんてこれで十分だろう。


387 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:35:20.07 ID:S3fTl+Ky 
――いや、一言だけ付け加えるならば。
「愛してるよ」
言ったと同時に、腕の中でこちらを見上げる智美の瞳から涙がじわっと溢れた。
「ほんとうに?」
「な、なんだよ。もう何度も言ってきただろ?」
「まだ私を愛してくれるの?」
「当たり前だ」
言って、唇を重ねようとする。
と、何故か慌てた様子で智美は俺のあごを押し返してきた。
「ま、待って。あの……先にお風呂に入らせて」
「え……なんでだよ。キスくらい良いだろ?」
「そうだけど……えっと……ほら、伸吾ってキスしたら我慢できなくなるでしょ?」
「え、そうかな……?」
それは時と場合による気がするのだけど。
なんだか智美は不自然に慌てている。
「お、お願い。ね? いいでしょ?」
「うーん、分かったよ……」
仕方なく抱擁を解く。同時に智美は慌てて着替えの置いてある部屋へと入っていった。
その時だ。
(……え?)
ふんわりと、嗅ぎ慣れない香りが漂ってきた。
(なんだこれ、香水?)
ほんの一瞬のことだったのでよく分からない。
でも多分高級な香水の匂いだったと思う。
(あいつ、こんなのつけてたっけ?)
なんだか似合わない気がする。
香水になんてあまり詳しくないからよく分からないけど、少なくとも女性的な香りではなかった。
(……ま、いっか)
いちいち妻の趣味に口を出すのは良き夫のすることではない。
そう思って思考を打ち切った、つもりだったのだが――
何かモヤモヤしたしたものは、いつまでも胸の内に留まったままだった。



388 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:35:46.05 ID:S3fTl+Ky 
【妻視点】

伸吾に抱かれるのが嫌だったわけじゃない。
そんなのは可能性としてあり得ない。
ただ、伸吾を汚したくなかったから。
社長の体液にまみれた私に触れて欲しくなかったから。
どうしてもお風呂に入らないわけにはいかなかった。

全身を鏡に映してみる。
どこにも跡は残っていない。
私から言わなければバレる心配ははいだろう。
いつかは言わなければいけないと思う。
けどそれは今じゃない。
今はただ黙って伸吾に従おう。

お風呂から上がった私は、何も身につけないまま一も二もなく伸吾の腕に飛び込んだ。
あんなことがあったすぐ後で夫に抱かれる私は厚顔無恥なのかもしれない。
だけど伸吾が求めてくれるなら私はいつだって応える。
たとえ心が痛くても。


389 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:36:05.60 ID:S3fTl+Ky
本番行為に移る前。
伸吾がいつも通りゴムを取り出したけど、私はそれをそっと押しとどめた。
「……智美?」
「いいよ、付けなくても」
「え、でも……いいのか? お前、仕事が……」
「やめるわ」
「えっ」
「明日辞表を出してこようと思ってる」
伸吾は大いに驚いていたけど、すぐにふっと力を抜いて笑ってくれた。
「そっか。智美がそう決めたんなら俺は反対しないよ」
「……ありがとう」
伸吾ならそう言ってくれると信じていた。
あんなことがあって、秘書の仕事なんて続けられるはずがない。
「よし。俺も頑張らなくちゃな」
伸吾が小さくガッツポーズを作っているのを見て、思わずほほえましくなってしまう。
「やだ。頑張るってなにを?」
「え、仕事だよ。智美、何を想像したんだ?」
「もう……」


390 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/18(土) 14:36:23.21 ID:S3fTl+Ky 
そんな気の抜けたやり取りをいくらかしたあと、もう一度準備をしてその時を迎えた。
「いくよ、智美」
「きて、伸吾」
自分から股を開いて伸吾を迎え入れる。
そしてゴムのついていない生の伸吾が私のあそこを押し開いて入って来た瞬間、思わず驚いてしまった。
「え……」
だけど、思わず声をもらしたのは伸吾のほう。
もしかして――
「ゴムをつけないだけで、こんなに違うなんて」
「伸吾も?」
「も、ってことは、もしかして智美も?」
「……うん」
ちょっと恥ずかしいけど素直に頷く。
まさかこんなに違うなんて想像もしていないかった。
「伸吾と1つになってるっていう感じがして、すごく幸せ」
「うん、俺も」
短いキスのあとに伸吾が動き始めたとき、私は確信した。
男は大きいほうがいい。経験が多いほうがいい。
そんなのは単なる下世話な噂話でしかないんだ。
愛する人と1つになる。
これ以上に幸せで気持ちのいいことなんて他にあるはずがない。
「あっ! あっ! あっ!」
あられもない声をあげて、伸吾の責めを受け止める。
いつもと同じやり方、同じ動き方。
でも全然違った。
嘘みたいに早く私達は上り詰めていく。
「く、出る……」
「出して、中に……あああああっ!」
私の中で伸吾が弾けたとき、私の意識も弾けた。
「あ、熱い……」
どろどろとした精液が私の中を満たしていく。
それでとんでもなく幸せな気分になるなんて、
実は私ってすごく淫乱なのかもしれない。
でも伸吾の前でだけでなら、いくらでも淫乱になったって構わない。

「あの、まだいいかな?」
残らず放出したあと、伸吾がぽつりと言う。
「え、でも抜かずになんて……」
「ごめん。あまりにも気持ちよすぎてさ」
嬉しくなる。私の中が伸吾をそんなにも悦ばせているなんて。
「いいよ。いくらでも、して……?」
意図的に艶っぽさを含んでそう言うと、
伸吾は覿面に色めき立って腰を振り立ててきた。

結局そのあと4回もしてしまった。
私も数え切れないくらいイった。
半狂乱で伸吾に責め立てられながら私は実感する。
ああ、また伸吾のものにしてもらえたのだ、と。



411 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:55:47.76 ID:uKV5HOtC [4/25]
【夫視点】

今日、智美は辞表を出しに行った。
これで全てが終わるはずだ。
昨晩、連絡の取れなかった間に智美はどこへ行っていたのか。
それはまだ聞けていない。
もしあの「社長」のところに居たのだとすると――
いや、やめておこう。
根拠もなく疑ったら智美がかわいそうだ。

ともかく今日は人事部に辞表を出しに行くだけ。
何かが起こるはずはない。
そう思い直して俺は仕事に没頭した。


412 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:56:12.98 ID:uKV5HOtC 
「随分といきなりだなあ」

やはり人事部にはいい顔をされなかった。
それはそうだろう。
辞めると言っても普通は「明日から来ません」では通らないし、
何より辞表というのは直属の上司に提出するものだ。
いきなり人事部に持ち込むなんて前代未聞だろう。
とにかく「社長には会えない理由がある」とゴリ押しして強引に預かってもらった。
「私物は持って帰ってくれよ」
投げやりにそうとだけ言われたけど、予想の範疇だ。
社長の予定なら把握している。
今日この時間は取引先との会談に出かけているはずだ。

ただ、去り際に人事部の人がなんだか気になることを言っていた。
「あ、でも今日は……
 ん? いや、いいのか。なるほど専属秘書だから特別にということかな」
何のことだかよく分からない。
気にしないことにしてエレベーターに乗り込んだ。


413 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:56:36.20 ID:uKV5HOtC
最上階。
もう二度と来たくないと思っていたこのフロアも、
今日で最後だと思うと感慨深いものがある。
社長室を素通りして秘書室へと向かい、手早く荷物をまとめ始める。
さすがに2年以上も過ごして居るといろいろ私物がたまっているなあ、なんて呑気に思っていた、その時。
きい、と小さく音を立てて秘書室のドアが開いた。
はじめ、人事部の人が様子を見に来たのかと思った。
でも振り返った私の視界に映り込んだその人影は――
「――?!」
一瞬、声が出なかった。
ドアからデスクまでたっぷり3メートルは離れているのに、
まるで刃物でも突きつけられたかのように私はよろよろと後ずさってしまう。
そんな。何故ここに居るんだ。
「ひどいな。そんなに怖がらなくてもいいじゃないですか」
その人――
社長はまるで昨晩の出来事なんてなかったかのようにいつも通りの笑みを浮かべている。
それがかえって怖かった。
「そろそろ来る頃だと思っていましたよ、トモミ」
「こ、来ないで!」
社長が一歩こっちに踏み出したところで、たまらず叫んだ。
大仰な仕草で社長は肩をすくめる。
「ひどいな。まるで僕が無理やりに君をものにしようとしてるみたいじゃないですか」
「し、したじゃないですか。昨日……」
自分の言葉で昨晩のことが思い出されてしまって、かあっと顔が熱くなる。
「あれは合意の上でしたよ。そうでしょう?」
「そ、それは……」
反論できない。
後悔はしている。これ以上ないほどに。
でもあれが本当に無理やりだったのなら警察に駆け込めばいい。
伸吾だって「レイプされた」と言えば分かってくれる……と思う。
だけどそれができないのは――
「しゃ、社長。どうしてここに居るんですか? 仕事は?」
無理やりに話の方向を変える。
何を思ってか、ふふ、と社長は笑った。
「今日の予定は全てキャンセルしました」
「なっ……」
「出来るんですよ。僕くらいの立場になるとね。
 本当なら面倒な雑務なんて全て部下に任せて、
 僕は年中バカンスにでも出かけて悠々自適に暮らしていてもいいくらいなんだ」
その言葉がどのくらい真実なのか私には分からない。
だけど事実として社長は私の目の前に居る。
「け、けど社長はいつもきちんと仕事をしているじゃありませんか。
 どうして今日に限ってそんなことを……」
「分かりませんか?」
ゆっくりと社長が近付いてくる。
今度は逃げることが出来なかった。
社長の目がひどく真剣だったから。
そう、あの時――昼下がりのレストランで初めて「愛している」と言われたときと同じように。


414 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:57:19.32 ID:uKV5HOtC 
「君を待っていたんですよ」
視線を逸らせない。
まるで魔法にでもかかったかのように私はその場から動けなかった。
何故私が社長を恐れたのかが分かった。
社長のことは怖かったわけじゃない。「あること」を理解したくなかっただけのだ。
でも――
「愛しています」
そう言われた時、理解できてしまった。
何故昨日、あんな簡単に社長の言いなりになってしまったのか。
あの日から2ヶ月の間に、私は心のどこかでこの人の想いを受け入れてしまっていたから。
何故あんなにも丹念に抱かれたのに「愛がない」なんてしきりに思ったのか。
それを認めたくなかったから。
私を愛している人に抱かれて、感じてしまったのだと認めたくなかったから。
欲望だけで犯されているのだと自分に言い聞かせていたのだ。
「んっ……」
重ねられる唇。
どうしても拒めなかった。
私ってこんなに意志の弱い女だったのか。
25年生きてきて、今初めて思い知らされた。


415 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:57:37.06 ID:uKV5HOtC
腰に回された手がそっと降りてきて、スカートの上からお尻を撫で回す。
伸吾がそうしたがっていると知っていて、でも今までさせてこなかった行為。
ちくりと罪悪感が胸を刺した。
「……昨日、夫に抱かれました」
キスをやめて、私は顔を小さく背ける。
社長と見つめ合ったままだと何かが壊れてしまう気がした。
「ほう、あのあとで? それはまた随分と大胆なことをしましたね」
さすがに少し驚いた様子で社長は嘆息する。
その間にも手は無遠慮に私のお尻に添えられたままだ。
「夫から求められたので……」
「ふうん。それで?」
「……あなたより、よかったです」
嘘偽りのない本心からの気持ち。
繋がる快楽も心を満たす幸福感も、社長に与えられたものとはまるで違った。
「へえ。それで君はご主人……たしかシンゴと言ったかな? 彼のほうを選ぶのですか。
 彼とのセックスのほうが気持ちいいからという理由で」
社長の口から彼の名前を聞くのは私をひどく落ち着かない気分にさせた。
どうしようもなく狼狽しながらどうにか口を動かす。
「そ、そういうわけじゃ……
 でも私が愛しているのは彼なんです。
 だから彼に抱かれると幸せなんです」
「それはどうかな」
社長は自信たっぷりに私の言葉を否定する。
「昨夜はちょっと卑怯だったというのは認めましょう。
 でも、ならどうして今も僕にキスを許したのです?」
「そ、それは……」
どうしてだろう。
自分でも分からない。
「こっちを見て下さい」
あごを掴まれて強引に前を向かされる。
おずおずと視線を戻すと、真剣なブラウンの瞳に間近から捕らえられた。
透き通ったガラス玉みたいなそこに私の姿が映っているのがはっきりと分かる。
――ダメだ。
次に何を言われるか、たぶん私には分かっていた。
そしてそれを拒めないという確信もまた同時に芽生えていた。
「トモミ。君が欲しい」
(ああ……)
透き通った瞳に捕らえられたまま求められて、意識が溶けていく。
「で、でも……」
よく分からないまま口から漏れるのは、形の上での拒絶だけ。
どうして拒絶しないといけないのかもよく分からない。
「比べてみればいい。僕と彼のどっちが君にふさわしいか」
比べる。
何より罪悪感を感じていたそのことを、この人は認めてくれるという。
「昨夜のことがどうしても忘れられないんです。
 もう一度だけ僕にチャンスを下さい」
私は――
無意識なんかではなくて。
はっきりと自分の意志で、こくりと首を頷かせた。



416 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:58:08.21 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

朝一番の仕事が終わって一休み。
智美は今頃どうしているだろう?
辞表を提出するだけだったらそろそろ家に帰っているころだろうか。
いつもなら、仕事中に智美の顔を思い出すのはこれ以上に楽しいことだ。
でも今日は何だか妙にひっかかる。
もしかすると、帰ってきたばかりの智美を抱きしめたときに感じたあの香りのせいかもしれない。
どうしても気になって、気がついた時にはメールを送っていた。
『今どうしてる?』
簡単すぎる文面。
これだけできっと智美は俺の気持ちまで分かってくれるはず。
そう信じて俺は仕事を再開した



418 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:58:26.04 ID:uKV5HOtC 
【妻視点】

「あっ、あっ、あっ」
社長室に場所を移して、私は立ったまま体中をまさぐられた。
ずっとこうしたかった。君の後ろ姿はあまりに魅力的だから――
そう耳元で囁かれながらこれでもかというほどお尻を撫で回され、
ジャケットすら着たままブラウスの胸の部分だけを開かれて散々に乳房を揉みしだかれた。
社長が伸吾と同じことを考えていたことには少なからず驚いた。
そして社長は伸吾よりも先にそれを実行に移した。
さらに今はスカートを腰の上までまくり上げられ、後ろから抱きすくめられて、
黒いストッキングも履いたまま、下着の中に社長の手の侵入を許している。
「あっ、あっ、社長……」
昨日は単に「他の男」としか意識していなかった、
でも今は「愛している」と私に言った人だとはっきり分かっている、
そんな人に下着の中で指を入れられて私は腰を震わせた。
「はぁ……はぁ……」
秘すべき穴を辱められる快楽に打ち震えながら、
信じられないことに私は伸吾にメールの返事を打っていた。
『まだ会社。私物の整理をしてる』
うまく指が動かずに、ひどく簡素な内容になる。
少し迷ってから、こう付け足すことにした。
『愛してるわ、伸吾』
「あっ! あっ!」
私が何を打ったのか見えたのだろう。
その瞬間、社長の指が激しさを増した。
「いけない人だな、君は」
「う、うそは……言って、ません……あっ」
「でも彼は君がこんなことを僕としているなんて知らない。そうでしょう?」
「あっ……当たり前、です」
社長はたぶん嫉妬している。
私なんかとは別次元の人だと思っていたあの社長が。
それを嬉しく思ってしまう自分を否定できない。
「あっ……はぁ……」
くちゅくちゅくちゅ。
差し入れられた指の動きに合わせてストッキングがぐにぐにと形を変えている。
そこから与えられる甘い感触を否定することができない。
「愛している」と私に言った人に昂ぶらされることに悦びを感じてしまう。


419 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:58:57.43 ID:uKV5HOtC 
伸吾からの返事はすぐに来た。
『俺も愛してるよ』
たぶん不自然な文面に見えたはずの私からのメールを見て、彼はどう思ったのだろう。
何も訊かずに私の望む返事をくれた彼の想いに心が満たされた、そのときだ。
「愛してるよ、トモミ」
耳元で優しく囁かれた。
その瞬間――
「あっ?! や、うそ……だめ……イク……あああっ!」
激しくされたわけでもないのに、突如として私は達してしまった。
それも軽くではなく、かなり深く。
「あ……あぁ……」
びくん、びくんと痙攣を繰り返す私の体を、社長は後ろから優しく抱きしめる。
「ん……」
唇を重ねるのも、もう何度目になるだろうか。
入り込んでくる舌の動きにこちらからも応えてしまう。
長い間深々と唇を重ね合って、私は絶頂の余韻に浸った。


420 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 01:59:29.80 ID:uKV5HOtC 
「昨日はすみませんでした。あんな状態の君に愉しんでもらうにはああするのが一番だと思ったんです」
私が絶頂から醒めきる頃を見計らって、社長はそんなことを言った。
昨日の行為。
決して流されまいとして、でも流されることを強要された記憶。
「……正直言って、辛かったです」
「でしょうね。本当にすみませんでした」
私の頭を優しく撫でながら、穏やかな声で社長は言う。
「あんなのは愛し合う行為じゃない。だから……もう一度僕に頂けませんか?」
迷う仕草は、素振りだけ。こくん、と私は社長の腕の中で頷く。
「よかった。じゃあそこのデスクに手をついて、お尻をこちらに向けてくれるかい?」
社長が指さしたのは、自分の指定席である社長のデスクだった。
「え、でも……」
言われた通りにする自分の姿を想像して、かあっと顔が熱くなった。
それはなんていやらしい光景だろう。
でも。
「お願いします。トモミ」
「……分かりました」
重ねて言われると、私は断ることが出来なかった。
ふらりと歩いて行って、言われた通りにデスクに手をつく。
「もっとお尻を高く上げるんだ」
「……こ、こうですか?」
伸吾にも見せたことがないような、とんでもなくいやらしい格好を社長の目の前で晒している。
なのに私はどこまでも従順だった。
ストッキングに包まれたお尻と、すっかり濡れそぼって愛液を垂れ流すそこにまじまじと社長の視線が注がれるのを感じても、
私は動くことができなかった。
「すごくいやらしいよ、トモミ」
うわずった社長の声が聞こえる。
(ああ……ごめんね、伸吾……)
伸吾への後ろめたさが消えたわけではない。
なのに自分がこうすることで社長が喜んでいると思うと私も嬉しくなってしまう。
ゆっくりと近付いてきた社長はすうっと私の股間からお尻を指先でなぞってから、
ストッキングと下着をまとめてずるりと押し下げた。
熱くなって蒸れていたそこに外気があたる。
そのひやりとした感触すら、今の私には体を昂ぶらせる刺激の1つだ。
「あ……ああ……恥ずかしすぎます、社長……」
「すぐに忘れさせてあげますよ。少しの辛抱です」
言って、社長は垂れ落ちた愛液で濡れた私の内股から足の付け根までをゆっくりと撫で上げる。
「下着がすっかり汚れてしまいましたね。こんなのをご主人が見たらばれてしまうんじゃないですか?」
「どうせ私が洗濯するから大丈夫です……だから……」
だから、何なのか。
その意味するところを言った後から理解しても、沸き上がってきたのは羞恥だけだった。
相手が社長だと、愛していると言ってくれた人だと意識するだけでこんなに自分が変わってしまうなんて。
伸吾への愛は今も変わらない。
でもそれとは別のところで、社長を受け入れ始めている自分を感じていた。


421 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:00:10.33 ID:uKV5HOtC
「さあ、行きますよ」
いつのまにかズボンから取り出されていたそれが私の秘所に密着する。
ゴムの被さっていない、生のペニスが。
「しゃ、社長……」
「昨日の僕に抱かれたのが、君の人生で一番気持ちのいいセックスだった。そうだね?」
少しでも腰を押し出せば入ってしまうという位置で止まったまま、社長はそんなことを言う。
「それは……」
「どうなんですか?」
「……はい。悲しかったけど、よかったです。でも……」
「そのあとでご主人に抱かれたときのほうが気持ちよかった?」
少し恥ずかしいけど、迷わずに頷いた。
意地なんかじゃない。
昨日伸吾に抱かれたときは自分でもびっくりするくらい乱れてしまった。
「君のところは結婚してもう3年だったかな?
 それで子供がまだだということは、今までゴムをつけてしていたのですか?」
「それは……」
夫婦の秘め事を他人に聞かせることは、伸吾と共有する秘密が減るみたいで抵抗がある。
でもこの人の前で嘘はつきたくなかった。
「はい。今まではつけてました」
「でも昨日はつけなかった。それでものすごく気持ちよかった。そうだね?」
「……はい」
ふふ、と社長は嬉しそうに笑う。
「世の中にはゴムをつけてもつけなくても変わらないという女性と、
 著しく変わるという女性が居ます。どうやら君は後者のようだ」
ぐ、と社長のそれが押し出される。
生のままの先端が私の中にぐいとめり込んだ。
(ああ……だめ、なのに……)
いくらなんでもこれだけは許してはいけない。
頭では分かっていても、体は動いてくれなかった。
「僕の愛を受け入れて下さい、トモミ」
その言葉と共に、ペニス全体がずぶりと押し込まれた。
「んんんんっー!」
ぞくぞく、と背筋が震える。
この大きさは一回入れられただけで慣れるものではない。
だけど昨日みたく息が詰まるほどの圧迫感はなかった。
ゴムを被っていない生のペニスの熱さが私の中を奥まで満たしている。
「さあトモミ。僕のチンポで気持ちよくなって下さい」
そんな、いやらしい言い方――
なんて思う暇もなく挿出が始まる。
昨日ほどゆっくりでもなく、しかし急性すぎもせず。
小刻みににバックから突き上げられる。
「あっ! あっ! あっ!」
違いはすぐに分かった。
それが出入りするたびに、
ごつごつとしたエラの部分が私の内側の肉をごりごりとひっかく。
その感触のリアルさが昨日とは段違いだ。
「あ、は、ああ、社長、社長……!」
「トモミ……僕の味をたっぷりと覚え込ませてあげますよ」
伸吾のものよりも大きなペニスが私の奥を何度も何度も突き上げる。


422 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:00:32.27 ID:uKV5HOtC 
「あ、あ、あ、あ、あ」
声なんて我慢できるはずがない。
頭を振り乱しながら、だらしなく開いた口からひっきりなしに声を上げる。
「愛しているよ、トモミ」
反則だ、と思った。
今そんなことを言われたら意識せざるをえない。
私の中に入っているのはこの人のものなのだと。
他の誰でもなく、私を愛してくれる社長のものなのだと。
「ああああっ! 社長……!」
「気持ちいいかい、トモミ」
「あっ、あっ、いいです、すごく、あっ、気持ちいい……!」
伸吾の前以外では言うことのないはずだった台詞。
でもこの人の前ならいいような気がした。
「しゃ、社長は……社長はいいですか、私のなか……」
「ああ、すごくいいよトモミ……
 強くしていいですか?」
「いい、いいです……社長の、好きに……あああああっ!」
ぱん、ぱん、ぱん。
社長の腰と私のお尻が激しくぶつかりあって音を立てる。
激しさを増した突き上げに、私は一気に押し上げられていく。
「社長、社長……私、もう……」
「いくんですか、トモミ。いいですよ、僕ももうすぐだ……!」
愛し合う行為、とまでは言いたくない。
でも私が社長を受け入れているのはもう否定のしようがない事実だった。
「あ、あ、あ……いく、いく……」
ラストスパートの激しい責めにがくがくと揺さぶられながら、うわごとのように口にする。
「いく、いく……ああああああッ!!」
「くっ……」
どくん。
私が達したのと同時に、社長も私の中に欲望の塊を放った。
びゅくんびゅくん。
そんな音すら聞こえると錯覚させられるほど勢いよく、
奥まで入り込んだペニスの先端からそれは何度も何度も放出される。
「ああ……熱い……」
伸吾以外の男に中出しされる。
そのことの意味を今さらながらに考える。
「はぁ……はぁ……」
私の背後で乱れた息を整える社長。
私を愛していると言った彼の精液を私は子宮で受け止めた。
「愛しているよ、トモミ」
そういって社長が再び唇を重ねてきたとき、私は思考を打ち切った。
きっと、これでいいんだ。


423 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:00:48.54 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

「ふふふ……」

昼休み。
智美から来たメールを見て1人ニヤついていたら、同僚に気味悪がられた。
だってしょうがないじゃないか。
俺はただ様子を訪ねただけだったのに、まさか「愛してる」なんて返ってくるなんて。
やっぱりあいつは俺のことを一途に思ってくれているんだ。
変なことを心配せずに、もっと自信を持とう。
人知れず俺はそう心に決めたのだった。


425 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:01:09.89 ID:uKV5HOtC 
【妻視点】

「ん、ん、ん……」

社長室備え付けのシャワールーム。
そこに敷かれたビニールマットに全裸の社長が寝そべっている。
そしてやはり全裸の私はその上に乗って、シックスナインの体勢で社長のものを口に銜えていた。
「ああ、とてもいいですよトモミ……」
嬉しそうに言って、社長は私の太股からお尻を撫で上げる。
そこだけでなく私の全身は、ねばついた液体を塗りたくられてどろどろになっている。
セックス用のローションだと社長は言っていた。
精液にも似たそれを乳首やあそこに塗りたくられる感触は私にとって未知のものだった。
その責めで私は呆気なくいってしまって、
その続きとしてこうして社長のものに奉仕している。
「僕のものをくわえて興奮しているんですね、トモミ。
 どんどん溢れてきますよ」
社長からは私のあそこが丸見えだ。
いやらしくそう言ってつるりと割れ目を撫でてから、そっと指を上へと動かす。
その上の窄まりへとそれが触れてきたとき、思わず驚いて口を離してしまった。
「しゃ、社長……そこは……」
「うん? トモミは経験がないのかい?」
そう言いながらも、社長はぐにぐにとそこを指先で揉みほぐしてくる。
「あ、あっ……な、ないですよ……
 社長、ダメ、そんなところ、汚い……」
経験どころか、そこを他人に触れられること自体初めてだ。
ある意味では女性器よりも恥ずかしいところを他人の指で弄くり回されるのはどうにも落ち着かない。
「しゃ、社長……」
「いいんだよトモミ。僕に任せて下さい」
言って、社長はぐいとさらに強く指を押し込んでくる。
「あっ?!」
排泄にも似た異物感。
まさかこれって――
「や、社長……本当に……」
「随分と驚くんだね。ご主人とこっちでしたことはないのですか?」
「そ、それは……知識としては知ってますけど……
 触られたのも初めてで……」
「それはいいことを聞いたな」
嬉しそうに社長が言ったのと同時に、お尻の異物感がぐぐっと奥まで入り込んで来た。
「やぁ……社長……」
「前の初めてを奪ったのは今のご主人かい?」
「……はい。そうです」
「なら僕はこっちの初めてをもらおう。今からその準備をするよ。
 いいですね?」
こっちの返事を待たずに、お尻の異物はゆっくりと出入りを始める。
「ん、ん、んっ……」
ローションのまとわりついた指は、
初めて異物を受け入れる私のそこにもスムーズに出たり入ったりする。
入り込んでくる時には異物感を、出て行くときには開放感を与えながら。
これが快楽なのか何なのかよく分からない。
「さあ、トモミも続けて下さい。もうすぐそれが君のここへ入るんですよ」
言われて、改めて社長の巨大なそれを見つめる。
これが私のお尻に入る?
どうにも現実感がなかった。


426 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:01:36.10 ID:uKV5HOtC 
でも――
(社長に初めてを奪われる……)
それはなんだかとても甘美な響きで、自然と体が動いた。
私の口には大きすぎるそれを無理やり口の中に導いて、唇をすぼめながら頭を上下させる。
「そうです、トモミ。君のここも少しずつ柔らかくなってきましたよ」
指の出入りが激しくなる。
「ん、ん、んっ」
お尻の穴をほじくられる感触は、やはり快楽なのか何なのかよく分からない。
でもその動きが激しくなるに従って、社長のものに奉仕する私の動きも自然と早さを増した。
やがて口の中でそれはぴくぴくと痙攣を始める。
放出の時が近い。
「くっ……出しますよ、トモミ。飲んで下さい……!」
びゅくん。私の口の中で社長のものが弾ける。
二回目だとは思えないほど勢いよく吐き出されるそれを私は喉で受け止めて、
言われた通りに嚥下していく。
社長のそれは伸吾のものよりもっと粘ついていて味も濃い。でも決して嫌ではなかった。
私が全てを飲み終えたのを見て、社長もようやくお尻から指を引き抜いた。
「意外にあっさりと飲んでくれたね。ご主人のものを飲んだことはあったのですか?」
「……はい、何度かは」
「そうか」
短く言って、社長はするりと私の下から抜け出した。
そうして先ほどと同じように、バックから私を犯す体勢に入る。
だけどその照準となるのはセックスのための穴ではなくて、もう一つの穴。
ぐ、とローションでぬかるんだそこに先端が触れる。
「だけどここは初めてなんだね?」
「はい、そうです」
「よし。トモミ、君の初めてをもらうよ。いいですね?」
「はい……社長。私の初めてをあなたに捧げます」
私の一言が社長を喜ばせたのかどうかは定かではない。
でも私がそう言ったのと同時に、社長はぐんと腰を押し進めてきた。
「あああああっ!」
ぬるん。
ローションの助けもあって、意外なほど呆気なく私のそこは社長のものを飲み込んだ。
「あ、あ……社長……」
「トモミ。僕が君にとって初めての男になったよ」
言って、社長は間髪入れずに挿出を始めた。
「んっ! んっ! んっ!」
思わず体に力が入ってしまう。
痛くはないけど異物感がすごい。
「一度大きく息を吐いてごらん。力を抜いて僕のものを受け入れるんだ」
言われた通りに「はぁっ」と大きく息をはく。
ゆっくりと私が呼吸を整えて全身の力を抜いたのを見計らって、社長は挿出を再開した。
「んっ! は、はぁ……はぁ……」
社長の責めは「処女」の私にも容赦がない。
前に入れたときと同じかそれ以上に激しく社長のものが出入りする。
(あ……わた、し……?)
気がつけば、前の穴から溢れ出た愛液が幾筋も太股を伝っていた。
触れられても居ないそこがきゅうきゅうと窄まっているのが分かる。


427 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:01:51.39 ID:uKV5HOtC 
「しゃ、社長……私……私……」
「気持ちいいんですね、トモミ」
「あっ、は……いい、みたいです……」
一度自覚してしまえばそこからは早かった。
社長のものが私のお尻を責め立てるその感触は、前で繋がった時とはまるで別種の気持ちよさだ。
「トモミ。これからこっちは僕専用の穴だ。いいですね?」
「あ、はっ、はっ……社長……」
何かとんでもないことを誓わされそうになっている。
なのに私はすっかり社長を受け入れてしまっていて――
「ここを開発できるのも、こうしてここで気持ちよくなれるのも、僕だけだ。いいねトモミ。誓えますか?」
「あっ、あっ、あっ……社長、それ、は……」
腰の奥がじいんと痺れている。もしかしてこれが、お尻の穴で達する絶頂のしるしなのかもしれない。
「誓ってくれ、トモミ……!」
「ああっ! しゃ、社長……!」
どうせ今までも伸吾はそこに触れようとしなかったのだ。
だから大丈夫――
初めての穴を責め立てられ続けた私は、もうそれくらいしか考えられなかった。
「ち、誓います……! こっちの穴は、社長専用です!」
「トモミ……! くっ……!」
「ああああっ! 社長ーーーっ!」
社長がお尻の中で放ったのと同時に、私もお尻で達した。
社長専用と誓ったその穴の中に、どくどくと社長のものが注がれる。
私は初めて味わうお尻での絶頂に打ち震えながら、それをとても愛おしく感じていた――


428 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:05.60 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

そろそろ夕方に差し掛かる時間帯。
いつもこの頃になると智美の顔を思い出す回数が増える。
あんな可愛いことを言ってくれたお礼に、
今日は思いっきり可愛がってやりたい。
そうだ、何か智美の好きな甘いものでも買って帰ろうか。
なにせ明日からはずっと智美が家で俺を待っていてくれるんだ。
それくらいしてもバチは当たらないだろう。
残りの仕事を急いで片付けながら、俺は帰宅の瞬間を心待ちにしていた。


429 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:21.80 ID:uKV5HOtC 
【妻視点】

「ああ、トモミ……!」
「社長……!」

仮眠室のベッドの上。
私達は体面座位で、お互いにしっかりと抱き合って繋がっていた。
社長が貫いているのは前の穴。
もうぐちゃぐちゃになったそこをさらにかき回してくる。
いつしか私も夢中になって自分から腰を振り立てていた。
「あ、ああっ! 気持ち、いい……!」
恥も外聞もなく口にする。
社長はすっがり蕩けた私の目を見つめながら、ついに言った。
「ご主人よりもいいですか?」
「あぁ……それは……」
逡巡しながらも、社長を求める腰の動きは止まらない。
それが何よりも答えを物語っていた。
「言って下さい、トモミ!」
「あっ、あっ……社長……」
セックスを続けながら真剣な目で見つめられる。
そんなことをされて、嘘なんてつけるはずがなかった。
「あ、あ……社長のほうが、いいです……!
 比べものにならないくらい……っ!」
「トモミ!」
社長の責めはさらに勢いを増した。
体と心を重ね合わせる快楽に翻弄されながら。動きを合わせて2人で上り詰めていく。
「ああ、愛しているよトモミ……」
「しゃ、ちょう……わたしも……」
私はついに決定的な一言を言おうとしている。
もう止められない。
繋がり合ったまま交わすその言葉がどれだけ気持ちいいか、私は知っているから。
「私も、好き……です……!」
「トモミ、トモミ!」
「あっ! あっ! 社長、社長!」
絶頂の瞬間、私はぎゅっと社長にしがみついた。
「僕のものになれ、トモミ!」
「ああっ! なります、私……社長のものに……
 あああああああああああっ!」
今までに味わった中でもっとも深い絶頂。
「く、トモミ!」
大きく上半身を反らして震える私の腰をぐいと引き寄せて、
社長は再び私の奥へと子種を吐き出した――


430 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:36.27 ID:uKV5HOtC
【夫視点】

智美の妊娠が発覚したのはそれから3ヶ月後のことだった。
逆算してみると、どう考えてもあの結婚記念日のあたりが一致する。
いざとなったら子作りってそんな簡単にできてしまうんだなあ、と感心させられてしまった。

そういえばあの時家に帰ってくるまで智美がどこに居たのかはまだ聞けていない。
でもそんなのは些細なことだ。
今の俺はいわゆる幸せの絶頂というやつだと思う。
智美のために、そしてもうすぐ生まれてくる子供のために。
今はただがむしゃらに働こう。


431 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:02:50.69 ID:uKV5HOtC 
【妻視点】

妊娠している、と聞かされた時にはどうしていいか分からなかった。
この子の種が伸吾なのか、社長なのか。
たぶん検査すれば事前に分かるものなのだろうけど、さすがにそれは憚られる。

結局私はあのまま仕事をやめたけど、社長とは場所を変えて何度か会って、その度に抱かれた。
伸吾を裏切っているという自覚はあるけど、
社長とのセックスは強烈すぎてどうしてもやめられなかった。
今もまだ私の気持ちは伸吾にある。
でも以前のように依存はしていないと思う。
もしこの子が社長の子で、私が伸吾に捨てられたとしても、私は1人で生きていける自信がある。
社長が拾ってくれるならそれでいいし、
そうでないならシングルマザーとしてやっていく覚悟もしている。

伸吾と社長。
私を愛してくれる彼等は、どちらも大事な大事な私の宝物だ。


432 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2012/02/19(日) 02:05:24.29 ID:uKV5HOtC [23/25]
以上です。

当初は二回目の寝取られももっと強引な感じになる予定だったのですが、
それだと私自身もあまり興奮できなかったのでこうなりました。
その影響で妻の心理が急激に変わりすぎているきらいがあるかと思いますが、
そこは実用性重視ということでご勘弁を。

では。
ありがとうございました。


<<Preview : Next>>

16:50 : 2ch > NTR(寝取られ,寝取り) : comments (21) : trackbacks (0)
<< 妻とケンカして、仲直りした話 前編 : TOP : 「独り占め」 "何もかも俺のモノにするADV" ヒロインを兄に寝取られ(Potage) >>

Comments

ここってスレからの転載もしてたんだっけか
...2012/03/03 05:12 PM
とりあえず、即落ちしすぎ
いくら肉欲に溺れるとしても、意思弱すぎ
...2012/03/03 07:21 PM
こういう堅そうに見えて実は糞ビッチな女って最高だわ
...2012/03/03 10:24 PM
掲載して頂いてありがとうございます。
転載というか、掲載して頂けないかどうか私のほうから打診しました。
忌憚のないご意見を頂けると嬉しいです。
作者...2012/03/03 10:34 PM
水の中に媚薬が入ってるかと思ったがそんなことはなかった・・・のか?

良かったです
個人的にはこういう全てにおいて勝っている男に女としての歓びを
思い知らされる系の話は大好き
まあ、たしかにちょっとトモミが簡単すぎたなとは思った
...2012/03/03 11:16 PM
単純に面白くない
...2012/03/04 12:07 AM
寝取られた事実を夫が知らないのは、寝取られとは言えないと思います。
これでは単に妻の浮気告白っぽいです。
続きがあるなら、夫に事実を知らせた後の展開を望みます。
無論ヘタレ夫は必要ありません。
寝取られと寝取らせは別者ですからね。
...2012/03/04 01:07 AM
夫が気付いてないせいで、ただの浮気体験告白との感想に同意。
加えて寝取られる動機が弱くて、これまた、単なる浮気話になってるかな。主役はあくまで夫婦で、他の男が入れるような隙間がもっとないと…。

精神的に間男に依存してる部分少なくて、単なるセックスだけの関係で辞められない的な展開は寝取りにこそ映えるが寝取られには??
...2012/03/04 07:01 AM
たまに寝取られた側が気付かないと寝取られじゃない、なんて人がいるけど全く理解できないな
男が苦悩する姿が無いとオナにー出来ないってことだよね
...2012/03/04 09:03 AM
一番肝心などちらの子供だったのか凄く知りたかったな〜
それに寝取られではなく浮気告白にしかみえない

体験談でたまに見るんだけど、堅い女ほどオチやすいのはホントかな?
...2012/03/04 10:56 AM
>たまに寝取られた側が気付かないと寝取られじゃない、なんて人がいるけど全く理解できないな

そちらの方が理解できない、寝取られと言ってるのに気付かないままとは意味がない
これだと寝取られではなく単なる浮気
...2012/03/04 11:04 AM
コレはそうかも知れないけど、浮気を知っていても知らなくても寝取られ感を感じることは出来る。
要は旦那に感情移入できるか否かだから。
ただこの作品は、たしかに寝取られを感じるほど旦那に感情移入できないので、妻の浮気体験日記みたいだとは思う。妻主体だからね。

要は作品を通して旦那主体で進めつつ、肝心の浮気シーンは妻主体でも良いものの後日談等も旦那主体でモヤモヤさせればいいと思う。
コレならば旦那が浮気を掴んでいなくても寝取られを感じることが出来る。
...2012/03/04 04:35 PM
肉体的にも精神的にも寝取り男に奪われた時点で
バレがあろうがなかろうがバリエーションの違いでどっちも「寝取られ」に含まれるんじゃないかな
オチとしてバレが来たほうが好きだとか個人的な好き嫌いはあるにしても
...2012/03/04 05:49 PM
本当の結末が知りたいな〜。
子供がどちらの子か、旦那が自分の子ではない子をそのまま育てるのか?それかばれて離婚してシングルマザーか社長と付き合うことになるのか?
凄く気になる。
...2012/03/04 07:34 PM
最後がよろしくないですね、妻は夫に捨てられても、どっちでもいいってのは。あくまでも、心は夫、体が愛人へにとどめておかんとなぁ、一応、夫婦愛がしっかりないと、寝取られは存立しないと思う。ただのビッチになってまう。だから、寝取られ好きは妻の浮気のセクロス描写よりも、その日の晩の夫婦の会話とか、心理描写に力が入ってないとダメかな。始まりの部分、嫁が襲われたのか、いつから溺れたのか、そのあたりも微妙。結局、どっちの子かわらかんシングルマザーでもと言われるとね。妻と夫を分けて書いてるのは面白いが、夫が司会進行、妻がセクロス描写になってますよね? 妻が夫に告白してるセクロス描写と、実際の内容が明らかに違う(もっとすごい)とかの方がおもしろいと思うが。夫と妻、それぞれ違う視点で表現できるいい方法なのに、妻の浮気告白がない設定であるために、それが生かされてない。たとえば、妻がメールで相談してるのを盗み見するとか、愛人側が撮影してたのをもらったとか、夫の知らない妻の本音をいかに表現するか、そのあたりを先人たちはいろいろ工夫してるだけに、惜しいと思う。
「忌憚のないご意見を」ということなんで、長くなりましたが、あくまで俺の意見ってことで、怒らないでね、
...2012/03/05 01:44 AM
頭硬い老害ばっかでワロタw
浮気体験談にしか見えないからダメ
子供がどっちか分からないからダメ
夫が妻の浮気を知らないからダメ

もうほんと表面しか見えてないのなw
テンプレ繋ぎ合わせた量産品で一生抜いてろよ
...2012/03/05 11:53 AM
>もうほんと表面しか見えてないのなw

お前もだろw
...2012/03/05 08:33 PM
どんなジャンルでも、細分化していけば好みは分かれていく
もんだし、そこでモメる意味なんてないでしょ。
...2012/03/07 01:41 AM
抜けなかった!
...2012/03/10 09:05 AM
文章の語り口が、なんというか感情移入しにくい。
興奮させたくて書いてないで、誉められたくて書いているという感じ。
...2012/03/15 08:29 PM
充分及第点だた
ただマジカルチンポは好きだけれど堕ちるシーンはそれに頼った感じもするので、浮気ものとして楽しんだ気もする

NTRものでも夫に知られないまま進行しても構わないが、極端に言うと
・妻の心変わり→浮気要素
・夫の敗北→NTR要素
つまりNTRに徹するなら、社長は妻を負かすより夫を負かす必要があると思う

Hに持ち込む段階までに、夫と格の違う優れた男、
または優れるどころか堕落した奴であっても女を惹き付ける能力が格段に優れた男、
その描写がもっと鮮明なら、これは傾くのも仕方ないと女性の弱さやビッチ感を減じ、
夫のピンチとして読者に焦燥感を持たせ、よりNTR的やばい感じが出せたと思う

Hシーンも、前戯段階でああもうこれはHテクや経験値やら雄としての歴戦振り、格の違いを強調して、流されても仕方ないような説得力があれば、
強姦でなくてもやられちゃった事にできる

妻が堕ちて行く、心変わりしていくときに、妻が変われば変わるほど社長を凄さを感じさせるものになっていれば、
それは敗北感や喪失させられた感(無力感)に繋がり、よりNTR的になると思う
...2012/03/21 04:46 AM

Comment Form


  
・サーバー負荷によりコメントができない場合があります。
ブラウザ[戻る]でページに戻り、時間を置いてから再度書き込みしてください。


Trackbacks

Trackback url



【タグ:寝取られ】DLsite.com




[GAME] 
寝取られ作品特集第四弾
 
寝取られ作品特集第三弾

寝取られ作品特集第二弾
寝取られ作品特集第一弾(DLsite)

人妻特集
戦うヒロイン特集(Gyutto)

キーワード:寝取られ
未亡人特集(デジケット)

[BOOK]
寝取られ・NTR本特集第一弾
寝取られ・NTR本特集第二弾



    アクセスランキング ブログパーツ

NTRBLOGエントリーページ