2014.02.20 Thursday
〜another episode〜
人影のまばらになったプールサイド。
スイムキャップから解き放たれた長い髪をそのままに、両脚を膝下から生温い水に付けて物思いに耽る一人の女の子。
一週間前から活動の場を高校近くの区民プールの屋内練習場に移した葉月達水泳部。
練習を終えた部員達が更衣室に向かう中、葉月だけがプールサイドに腰掛けたまま動こうとしなかった。
普段は二年女子のリーダー的存在であり、来年度の部長候補と目されるほどのパワー漲る彼女の姿はそこには無かった。
溜息をついたかと思えば微笑み、そして項垂れてブツブツと呟いてみたり。
広い建物の中で、例外的にこの時期だけ水泳部に優先的に競技者向け50メートルプールの使用を許されたこの状況ならともかく、一般人が多い通常のプールならば、男どもに放って置かれることはなかったであろう隙だらけの今の彼女。
しかしそんな恵まれた(?)境遇にあることを理解していた彼女は、その特権を存分に享受すべく、両脚をバタつかせたりしながら自分に率直に行動し、身体の一部とも言える水面に自身の思いを注いでいた。