〜5.18年の歴史を脅かすもの(前編)〜
朝6時、蚊の鳴くような弱々しい目覚まし音が五月蝿くベッドの隣で鳴り響いていた。
そう、第三者からすると、目覚まし時計としての機能性に疑問を持ちたくなるような小さな音も、子供の頃から聞かされている和希にとっては充分五月蠅く感じられるものだった。
いつものように目覚まし時計を止めてすぐに起き上がる。
爽やかな目覚め。
天気もいい。
夢なんか全く見ない。
眠りの深い和希は、寝たと思ったらあっという間に朝になる。それが彼の人並外れた集中力の源でもあった。
大きく背伸びをして、ふと机の上の紙切れの存在に気付く。
「おはよう。朝ご飯、うちに食べに来て」
最愛の恋人、瞳からの置き手紙をニヤつきながら見ていると、徐々に昨晩の事が蘇ってくる。と、同時に蒼くなって、慌てふためく。