2011.08.07 Sunday
山本安太郎の足取りは重い。
それはうだるような暑さの所為ばかりとは言い難い。
スラックスのポケットに仕舞いこまれたハンカチは、
彼の額から流れ落ちる汗を一日中吸い込み、
もはや用を為さなくなってしまっている。
もう少し足の回転を上げて、早く帰社しなければ、
またどこで道草を食っていたのだと課長にいびられるのは目に見えている。
かといって、早く帰ればそれを回避できるのかといえば、
その可能性は限りなく皆無に等しい。
右手にぶら下がるバッグの中には、
まっさらのままの契約書が山積みになっている。
山本安太郎の名誉のために補足をするならば、
彼は営業中に道草を食ったことなど、ただの一度もない。
そう、ただの一度も。
それはうだるような暑さの所為ばかりとは言い難い。
スラックスのポケットに仕舞いこまれたハンカチは、
彼の額から流れ落ちる汗を一日中吸い込み、
もはや用を為さなくなってしまっている。
もう少し足の回転を上げて、早く帰社しなければ、
またどこで道草を食っていたのだと課長にいびられるのは目に見えている。
かといって、早く帰ればそれを回避できるのかといえば、
その可能性は限りなく皆無に等しい。
右手にぶら下がるバッグの中には、
まっさらのままの契約書が山積みになっている。
山本安太郎の名誉のために補足をするならば、
彼は営業中に道草を食ったことなど、ただの一度もない。
そう、ただの一度も。