2014.07.11 Friday
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〜最終話 彼と彼女と、そして自分の未来〜
柔らかな日差が来たるべく真夏の太陽を連想させ始める季節、クールビズに衣替えした東京の街並みは色とりどりに華やいでいた。
数年前とはガラリと雰囲気を変えた東京都心部。
緑に溢れ、整備された道路は渋滞も少なく、洗練された印象と昭和を彷彿とさせる安心感に包まれた超近代都市は、全ての人々に優しく、そして居心地の良い環境を提供していた。
1960年代の高度経済成長期からスクラップアンドビルドの一途を辿ってきた巨大都市は、前年の東京オリンピックへ向けての市街地の大構造改革を終えたばかり。
常に建築音の鳴り止む事のなかった東京の街は、オリンピックが開催されてから約半年の間、工事らしい工事は一切行われず、数十年に一度あるかないかの「静かな都会」の佇まいをしていた。
完成型、の筈のこの街が再び動き始めたのはこの春から。
増殖する街の発展に終わりはない。
夢から覚めたかのように、再びの忙しない人の動きが間延びした時間軸を引き締め始めていた。