数カ月後の日曜日、裕介はさゆりの部屋に来ていた。
「ひさしぶりに、ゆっくり二人で過ごせるね」
「・・・うん」
裕介は照れて俯く。
さゆりと裕介が二人きりで会うのは三週間ぶりだった。
裕介はほんとうは嬉しくて飛び上がりたい気分だが、それを表に出せずにいた。
さゆりはそんな裕介に気を使うように申し訳無さそうに話す。
「ごめんね。最近、仕事急がしくって」
「いいって、気にしてないよ」
「うん」
「・・・」
「あっ、ゆうちゃん。私こんど、映画のオーディション受けるの」
さゆりは嬉しそうに笑顔で言った。
裕介はさゆりが見せた笑顔が、グラビアのさゆりの笑顔と重なり胸が苦しくなる。
「・・・そうなんだ」
裕介は素っ気無く答えてしまう。
「・・・うん」
「あっ、よかったじゃん、さゆりは女優になりたいんだもんな」
裕介はさゆりの辛そうな顔を見て、慌てて言った。
「・・・うん。ありがと」
「・・・」
「あっ、そうだ、ゆうちゃん、おいしいケーキあるから食べよ」
そう言うとさゆりは、部屋を出てダイニングに行った。